新聞協会長辞任へ

 朝日新聞の箱島信一相談役(前社長)が、衆院選をめぐる虚偽メモ問題で新聞協会会長を辞任することが決まった。朝日取締役も辞任するという。けさの朝日の記事によれば、箱島氏は記者会見で「偶発的なこととは思っていない」「新聞をはじめジャーナリズム全体の信頼と名誉を傷つける不祥事」と述べ、秋山耿太郎社長も虚偽メモ問題では初めてとなった記者会見で、「『解体的出直し』に不退転の決意で臨む」と述べたという。
 「偶発的なこととは思っていない」との言葉が気になる。本当にそう思っているのか、という意味でだ。朝日新聞は今回の不祥事が表面化した際、記者会見を開かなかった。年明けのNHK番組改変問題では、あれだけ懇切丁寧に会見を開き報道対応をしていたから、記者会見を開くかどうかは、それに値するテーマかどうかの認識次第だったと言っていい。虚偽メモ問題で会見を開かなかったということは、ことの重大さについて朝日幹部には当初その程度の認識しかなかった、ということではないのか。「大馬鹿ものの記者がいたのでクビにしました」で済ませたい、との本音があったのではないだろうか。
 今回の件については、朝日新聞にいる知人たちからも色々なことを聞く。それは伝聞だからここでは触れない。ただ、大手新聞社記者の不祥事は数多くあれど、取材上の記者倫理そのものが問われる不祥事は、朝日に集中している。自他ともに「日本の責任新聞」を認める朝日だから、取材相手の目も他社に比べ厳しいという事情もあるだろうが、結果として誤報になったという判断ミスのレベルではなく、取材方法そのものに職業倫理上の問題があったケースとなると、古くはサンゴ事件以来、朝日の記者のケースが目立つ。朝日に身を置く人たちには異論もあるかもしれないが、そこまで認識を持たないと「解体的出直し」は掛け声だけに終わってしまうだろう。
 もうひとつ感じるのは、「新聞社」が営利追求のただの「会社」になっていることとの関連性だ。地方紙を含めて全国の新聞社がそうなりつつある。経営者たちが口にするのは「会社の生き残り」とか「確固とした経営基盤」とか、そんな話ばかりだ。「ジャーナリズム」を口にしなくなった。実際のところ、新聞が売れるかどうか、広告が取れるかどうかを左右するのは紙面のジャーナリズムではないという側面もある。ジャーナリズムに鈍感な経営者たちのもとで、取材・報道の現場が疲弊しきっている。
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by news-worker | 2005-09-08 10:29 | メディア  

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