自民圧勝 その2

 開票から一夜明けて、新聞各紙はきょうの夕刊でも識者を登場させるなどして、選挙結果の見方を紹介している。「今まで投票に行かなかった層が、今回はこぞって自民党に投票した」「現状への鬱々とした不満が『改革』に期待を持たせた」といったところの見方が共通しているようだ。
 「現状への不満」とは、わたしが身を置いている労働組合に関係が深い雇用の側面から見れば、非正規雇用とか非典型的雇用と呼ばれる派遣社員や契約社員、あるいはニートと呼ばれる若年層らの不満だろう。自らの意欲、能力の問題を遙かに超えたレベルで、自分の仕事や生活が決まってしまっていること。その不満が「改革」を求めるのは当たり前だ。
 メディアの分析は、小泉首相が争点を郵政民営化に単純化することで、「改革」ムードを分かりやすい形で演出していったのに対し、民主党は「改革」を求める層の受け皿になることに失敗したとの見方でも共通しているようだ。ここまではわたしも同感だ。分かりやすかったのは、朝日新聞の夕刊に掲載されていた漫画家倉田真由美さんのコメント。「ベストセラーは、ふだんは本なんか読まない人たちを引きつける力がある」と例えている。なるほど。
 一方、今回の選挙結果のそうした側面から、つまり政策の中味ではなくてムードでこれだけ自民党が圧勝してしまったことに対し「衆愚政治」とみる指摘もある。これには異論がある。ムードでも何でも、投票率が大きく上がったことは間違いない。選挙への関心が高まったこと自体までを否定しては、民主主義は成り立たない。かつて民主主義がファシズムを生んでしまったことはあるが、それは民主主義が本来的に内包しているリスクだ。民主主義は、自らを否定する言論や政治的主張であっても、手段が合法的なら容認せざるをえない。だから、議論が大事なのだ。その議論が今回の選挙戦ではなかった。議論がかみ合わなかった。
 今回の選挙結果は、それも現実だ。改憲問題をはじめとして、これから日本の社会で何が始まるのか不安を覚えるけれども、「だから日本の民主主義はレベルが低い」と言ってみても何も始まらない。「勝ち組」「負け組」が流行語になる今の社会経済情勢がこのまま進むことを、果たして自民党に1票を投じた人たちの全員が望んでいるかどうかは分からないが、少なくともかつてない世論の高まりが現出したのは事実だ。日本が再び軍隊を持ち、海外で「殺し殺され合い」をするのかどうか。それが問われる事態もそう遠くはない。そのときに、今回のような世論の高まりが「NO」という声とともに実現できればいい。それは、平和と民主主義を守りたいと願うわたしたち一人ひとりが、これから何をしていくかにかかっている。広く社会全体に議論が広がるかどうか次第だと思う。
 民主党の支持基盤には労働組合もある。ナショナルセンターの連合が全面支援しながらの惨敗は、既存の労働組合運動もまた市民社会の支持と共感を得られなかったことを示している。労働組合の課題も今回の選挙結果で明らかになったと思う。
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by news-worker | 2005-09-12 22:09 | 社会経済  

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