航空労組連絡会の皆さんに教わること

 8日は航空関係労組の懇談会、言ってみれば労働組合同士の新年会に出席した。航空産業では、最大手の日本航空の分裂労務政策が山崎豊子さんの小説「沈まぬ太陽」などで知られているが、労働組合運動は2つの潮流に分かれている。会社の経営方針に同調する組合と、そうではない組合だ。後者は「航空労組連絡会(航空連)」(HP)をつくっている。懇談会は、その航空連関係の集まりだった。新聞労連は航空連とここ数年来、憲法改悪反対や有事法制反対の運動で共闘している。
 ちなみに、「会社の経営方針に同調する組合」は「航空連合」(HP)をつくっているのだが、そう決め付け風に言うと、航空連合からは怒られるかもしれない。航空連合に参加している労働組合の方とは面識がないので、正直、「会社の経営方針に同調」と言ってしまっていいのかどうか分からないところもあるが、航空連合と航空連のそれぞれのホームページをご覧いただくと、労働組合あるいは労働運動に対する両者のスタンスの違いがよく分かると思う。




 さて、航空産業といえば重大トラブルの多発が社会問題になっている。懇談会でも、あいさつに立った航空労組の方はみな、安全の確立は労組にとっても最重要の課題であると強調した。今までも、航空連の方々から、空の世界で今何が起きているか色々とお話を聞く機会があったが、トラブル多発の原因は航空会社の利益最優先、効率最優先の経営方針に尽きる。
 昔は日本の航空産業は住み分けがはっきりしていた。1970年代当時(やや記憶に自信がないのだが)は、日本航空は国際線と国内幹線、全日空は国内幹線と主要路線、東亜国内航空(後に日本エアシステム、現在は日本航空と経営統合)は国内ローカル路線だった。それが原則として自由競争になり、今ではスカイマークエアラインなどの新規参入組も増えて、し烈な競争が続いている。日本の産業界の中でも、規制緩和がもっとも早くから、かつドラスティックに進められてきた分野だ。
 規制緩和は、今では小泉首相が口にする「構造改革」という呼び方に変わってきたけれども、要するに「公」の規制、保護を外して、競争原理に委ねるということだ。競争は無限に続く。航空の場合は各航空会社間の競争だけではなく、路線によっては新幹線とも競合している。つまりは料金の値下げ競争だ。収入は容易には増えなくなってしまったから、後はコストカットということになる。競争が無限に続く限り、コストカットも無限に続く。保守・整備部門も聖域ではなくなり、外注や別会社化などの合理化が進んだ結果、整備の質が低下し、整備不良のままの機体が飛ぶことになってしまっている。
 懇談会でも、背筋が寒くなるような話を聞いた。裏付けを取っているわけではなく、恐らく報道もされていないからボカすけれども、国内線で飛行中に機体のコントロールが効かなくなった。「緊急事態」となると大ニュースになってしまうので、そうは連絡せず何とか無事に着陸したが、調べてみたら、あるはずのボルトが何本も欠落しており、本当に「あわや」の事態だったという。操縦していた機長は外国人だったらしいけれども、「こんな機体に乗ってられるか」ということだろうか、すぐに会社に辞表を出してしまったという。
 規制緩和によって、確かに航空運賃は驚くほど安くなった。わたしも出張ではよく飛行機を利用するが、東京-大阪線では時間帯によっては何と1万円を切る便もある。しかし、こうした「改革」がわたしたちの社会にもたらしているものは何だろうか。昨年4月に尼崎市で起きたJR西日本の脱線転覆事故でも明らかな通り、「利便」と引き換えに失われたのは「安全」だ。
 安全確立のために、行き過ぎた合理化に待ったをかけようとしている航空連の労組の皆さんの取り組みを応援したいが、しかし、それが本当に実現可能かどうかは、実はわたしたち利用者がどう考えるか次第ではないだろうか。多少、運賃が高いとしても、今よりも利便性が落ちるとしても、それで安全が確保されるのならその方がいいと、わたしたちが考えるかどうかだ。少なくともわたしはそう考える。
 小泉政権の「構造改革」路線も全く同じ問題だ。このまま「格差社会」化が進んでいくのを是とするのか非とするのか。昨年9月の衆院選で与党が圧勝し、わたしたちが投票行動で意思を示す機会はしばらくないかもしれないが、わたしたちが意思を示せば流れは変えられる。労働組合はその意思表示の手段でもあると思う。

 懇談会では、航空産業で働く人ならだれでも一人で入ることができる個人加盟組合「スカイネットワーク」の報告も聞くことができた。スカイマークエアラインズは何と団交を拒否。労働委員会から是正の命令を受けても、スカイネットワークの役員が団交に同席することはやはり拒否しているという。新規参入を果たし健闘している先進的な企業イメージを抱いていたが、団交拒否とは実に古典的な不当労働行為だ。社員を使い捨てにするくらいでなければ、新規参入など実現できないということだろうか。

 新聞労連や航空連など10余の産別労組で「憲法改悪反対労組連絡会」という共闘組織をつくっている。それぞれの仕事、産業と憲法のかかわり方が興味深く、これから9条を焦点にした改憲の動きが緊迫化していく中で、けっこうユニークな活動ができるのではないかと思っている。あらためて詳しくご紹介したい。
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by news-worker | 2006-01-09 01:14 | 労働組合  

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