新聞の再販制度維持が「業界エゴ」でないために

 きのう20日付けの読売新聞朝刊に、新聞の特殊指定見直しに絡む世論調査結果と特集記事、社説が掲載され、きょう21日付け朝刊では、朝日新聞も世論調査結果の記事を掲載している。朝日の記事はサイト上で見当たらなかったのだが、新聞の宅配制度について91%の人が「今後も続いた方がよい」と答え、「その必要はない」と答えた人は6%だったという内容。
 読売の記事、社説、特集をめぐっては、元朝日新聞記者のtmreijiさんが「新聞読んだ?」で業界エゴの臭いを指摘され、毎日新聞の磯野彰彦さんも「上昇気流なごや」でネット上アンケート(?)をエントリーされている。



 読売、朝日がこの時期にそろって世論調査のテーマに新聞の売り方を取り上げたのは、公正取引委員会が「新聞特殊指定」と呼ばれる新聞の販売ルールの見直しを表明していることを受けてのことだろう。
 新聞は他の商品と違って、同じ題号の新聞なら全国一律の同じ価格、すなわち定価で販売されている。そのことが安定的な販売収入(もちろん部数の増減に左右されるが)をもたらし、新聞販売店網の維持を可能にし、全国どこでも戸別配達を可能にしている。この定価販売を規定しているのが独禁法上の例外規定である著作物再販制度であり、その運用面のルールが新聞特殊指定だ。
 新聞の売り方には様々な批判があるのは承知の上で、それでもわたしは、やはり新聞の再販制度と特殊指定は必要だと考える。その理由は過去のエントリー「それでも新聞再販は必要」「特殊指定改廃に反対する新聞労連声明」で書いたので、ここでは繰り返さない。
 新聞が長らく著作物再販制度の適用を受けてきたのは、新聞が社会にとって必要な公共財と認知されてきたからにほかならない。その新聞の「公共性」が今、大きく揺らいでいるのは間違いがない。だから、新聞の再販制度を継続させたいと訴えるなら、新聞の「公共性」を再構築しなければならないと考えている。それができないなら、新聞社、新聞業界側が何を訴えようが、業界エゴでしかない。
 もう一つ、新聞の発行本社側にいると見落としがちな視点がある。新聞販売店で働く人たちのことだ。新聞販売会社に身を置く今だけ委員長さんが「新聞業界ってオモシロイ!?」で訴えておられる通り、販売店にとっては死活問題。読者から見れば、新聞社と販売店に違いはない。だから、これは発行本社の側にいる人間こそがきちんと考えなければならない問題だ。

読売の世論調査記事

(引用開始)
新聞の特殊指定「存続」84%望む…読売世論調査
 読売新聞社が11、12の両日に実施した全国世論調査(面接方式)で、同じ新聞であれば、全国どこでも基本的に同じ価格で販売することを定めた新聞の「特殊指定」制度について、「続ける方がよい」と回答した人が計84%を占めた。「そうは思わない」は計11%だった。

 公正取引委員会は、6月までに、この特殊指定を見直す方針を示している。特殊指定が廃止されると、過度の価格競争によって販売店の経営悪化などを招き、配達コストがかかる山間部、過疎地などでは新聞の値段が上がったり、戸別配達(宅配)が打ち切られたりする恐れがある。

 調査で、再販売価格維持制度(再販制度)の存続についても聞いたところ、「続ける方がよい」が85%で、「変える方がよい」は11%だった。同様の質問は、1995年以降、過去4回行っているが、95年の87%に次ぐ高水準だった。

 宅配制度については、「続ける方がよい」が91%に達し、「なくなっても構わない」は、7%。過去にも2回、同様の質問をしているが、今回も含め、いずれも9割以上が宅配制度の存続を望んでいる。

 また、新聞にとって、とくに重要だと思うものを、三つの選択肢の中から選んでもらったところ、「記事の内容の良さ」82%が最も多かった。以下、「読者へのサービスの良さ」9%、「値段の安さ」6%の順。多くの国民は、新聞に対して価格やサービス面での競争よりも、紙面の内容での競争を求めているようだ。

 さらに、世の中の出来事を正確に知ったり、必要な知識を得るために、役立っているメディアを三つまで挙げてもらったところ、「一般の新聞」81%がトップで、「NHKテレビ」63%、「民放テレビ」50%――などが続いた。

 インターネットなどの普及により多メディア時代になっても、「新聞は必要」と考える人は計93%に達した。

(2006年2月19日23時53分 読売新聞)
(引用終わり)

読売社説

(引用開始)
2月20日付・読売社説(1)
 [新聞の特殊指定]「活字文化の維持・振興に欠かせぬ」

 活字文化を維持し、振興するうえで、新聞が果たす重要な役割に着目すべきではないか。

 公正取引委員会が、新聞などに適用している「特殊指定」の見直し作業に着手した。6月までに結論を出すとしている。

 新聞の特殊指定が廃止・縮小された場合、激しい販売競争が起きる可能性がある。同一の新聞なら、全国どこでも同じ価格で購入できる戸別配達システムが、大きく揺らぐ事態も起こり得よう。

 日本新聞協会は、読者に安定的に新聞を届ける宅配制度を維持し、ひいては言論の自由などを守る立場から、見直しに反対している。

 公取委は新聞に対する特殊指定を、現状のまま存続させるべきである。

 独占禁止法に基づいて、特定分野での不公正な取引を防止するのが特殊指定の目的だ。新聞を含め、教科書、海運業など7分野に適用されていた。

 公取委は、このうち5分野の指定を見直す考えを表明し、すでに1分野の廃止を決めた。

 新聞の特殊指定では、教材用などの例外を除いて、相手や地域によって異なる定価をつけることを禁止している。乱売合戦が起き、「社会の公器」である新聞の経営基盤が不安定化するのは望ましくない、との考え方が背景にある。

 新聞や書籍などの著作物については、発行会社が小売価格を指定できる「再販売価格維持制度」もある。

 再販制度と特殊指定は車の両輪だ。一体となって宅配制度を支えている。特殊指定が失われれば、再販制度の維持にも支障が出かねない。

 公取委はかつて、再販制度の廃止を進めようとした。だが、世論の強い反対で方向転換し、当面存続させることで決着したのは5年前だ。

 その時にわき起こった声を、公取委は思い起こしてほしい。「著作物は活字文化を育て、社会の発展や表現の自由になくてはならない」「だからこそ、著作物を支える再販制度は必要だ」、という世論である。

 その傾向は今も変わってはいない。読売新聞が実施した世論調査では、新聞の再販制度や特殊指定を支持する回答が、圧倒的に多かった。

 昨年7月に施行された文字・活字文化振興法は、文字・活字文化の振興は国と地方自治体の責務だ、と定めている。今回の公取委の動きは、法律の趣旨に沿うものとは言い難い。

 新聞に対する特殊指定の見直しは、国民の利益に反していよう。公取委には、再考を促したい。

(2006年2月20日1時26分 読売新聞)
(引用終わり)

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by news-worker | 2006-02-21 10:18 | メディア  

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