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(続)「取材源の秘匿」が理解できない裁判官が現れたことの意味は

 「取材源の秘匿」をめぐる東京地裁の読売新聞記者への決定が論議を呼んでいるさなか(前回のエントリー)の17日、読売新聞と同じ報道、同じ訴えで、東京高裁が東京地裁とは正反対の判断を示した。
 毎日新聞記事の一部を引用する。

(引用開始)
<東京高裁>NHK記者の証言拒絶認めた地裁決定を支持 [ 03月17日 12時06分 ]
 米国の健康食品会社への課税処分に関する報道を巡り、NHKの記者が民事裁判の証人尋問で取材源の証言を拒絶したことについて、東京高裁は17日、拒絶を正当と認めた新潟地裁決定(05年10月)を支持し、会社側の即時抗告を棄却する決定を出した。
 雛形要松(ひながたようまつ)裁判長は「報道機関が公務員に取材を行うことは、その手段、方法が相当なものである限り、正当な業務行為。取材源に(守秘義務違反など)国家公務員法違反の行為を求める結果になるとしても、ただちに取材活動が違法となることはなく、取材源秘匿の必要性が認められる」と述べた。
(引用終わり)

 高裁決定は「報道機関の取材活動は国民の『知る権利』に奉仕する報道の自由を実質的に保障するための前提となる活動」とし、「取材源の秘匿」が守られなければ、取材活動が維持できなくなると認定している。そうなれば「知る権利」も「報道の自由」も形骸化するだろう。
 判例を踏まえ、普通に判断すればこういう結論になる。東京地裁の藤下健裁判官の判断が特異なだけだ。「異常な判断」と言ってもいいかもしれない。藤下決定が速やかに高裁で是正されるように望む。

 取材実務の経験から言えば、官公庁を担当する新聞記者の仕事は、日常的に取材先に「守秘義務違反」を迫ることに等しい。そのシチュエーションも様々だが、一般的に言って、取材先が言いたくないことこそが大きなニュースバリューを持つことが多い。その最たるものが権力の不祥事、あるいは公権力を行使する個人の不祥事だ。
 不祥事情報をつかんで取材しても、権力の側はそうおいそれと認めるわけではない。徹底的にシラを切る場合すらある。「守秘義務」が取材拒否の万能のツールになってしまったら、報道は成り立たない。社会には公式発表の情報しか流れない。それでは61年前までの「大本営発表報道」と同じだ。

追記(3月18日)
 「大本営発表報道」をめぐるわたしの以前(3月10日)のエントリーをリンクした。ご一読を。

by news-worker | 2006-03-18 00:23 | メディア  

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