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ブログ開始1年~実名で運営するルールなど

 書こうと思いながら随分と時間が経ってしまったテーマがある。経済産業省消費経済部長の谷みどりさんが、2月1日に個人で開設したブログが、3週間後に閉鎖した問題だ。電気用品安全法(PSE法)を取り上げたエントリーによって「炎上」したことが理由だと指摘されている。省内でも、勤務時間中のブログ更新が国家公務員法の職務専念義務違反に当たるとして、注意を受けたという。この件については朝日新聞記事が詳しく紹介している。
 遅まきながらも、この件について書こうと思ったのは、このブログ「ニュース・ワーカー」が昨年の4月4日に運営を開始してちょうど1年を迎えたからだ。谷さんのブログのことは、閉鎖が話題になるまでわたしは全く知らなかったが、組織人が実名で、個人の立場と言いながら組織のことにも言及するという点では、共通点がある。




 1年前、何を考えてブログを始めることにしたのかは、事実上の最初のエントリー「なぜブログ?」に記した。そこでは、以下のようなことを書いた。

(引用開始)
 しばらく前からブログをやってみようと思っていた。労働組合や職場で今のメディア事情を考えたとき、一人ひとりの記者があまりにも企業ごとの縦割り意識に縛られていると感じていた。わたし自身も含めてだ。
 (中略)
 もっと記者が「個」を取り戻せないものか。「この取材はおかしい」あるいは逆に「こうしたことを書くべきだ」と、どうやったら記者個々人が自由に発言できるか。そのことを考える上で、個人が直接、社会や市民と向き合うブログは大きな可能性を持っていると思う。
 ましてや労働組合は本来、企業内にあっても企業とは独立の組織として、組合員一人ひとりの自由な発言を担保する後ろ支えでなければならない。企業のしがらみから解放されているはずの労組専従の身である自分にとって、インターネットという公共空間で直接、自分自身の責任でメディアやジャーナリズムについて発言することは、なかば義務でもあると感じている。
(引用終わり)

 この思いは今も基本的に変わっていない。一方で、実名で1年続けてきて、限界やもどかしさを感じることがあるのも事実だ。
 個人の考え方とは言え、わたしがブログに書くことで、わたしが運営に責任を負っている「新聞労連」という組織に所属する労働組合ないしは組合員を、窮地に追い込みかねないようなテーマもある。そうした場合は「書かない」ことを、わたし自身のルールにした。そうしなければ、このブログは「本末転倒」になってしまうからだ。
 しかし、そのテーマがメディアや労働組合運動の本質論にかかわる問題であることも多い。その場合には、「限界」「もどかしさ」は顕著になる。「匿名で運営していれば、もっと書けるのに」と考えるのは、そんなときだ。書けないことは書けない。そんなケースほど、新聞労連の運動の本筋の中で、言ってみれば「本来業務」で積極的に取り組むように努めている。
 ほかにも「書けない」場合がある。組織の運動方針、あるいは具体的な取り組みが決まっていない、固まっていないテーマだ。わたし個人の考えがあったとしても、先走って書くわけにはいかない。基本的に新聞労連の組織課題に直接かかわる事柄は、運動方針が決まってから、あるいは具体的な取り組みが始まってから書くことを、これもまたわたし自身のルールとした。

 一方で、個人の考え方と組織の方針が一致している問題でも、社会の理解が得られるかどうか、現に社会には厳しい意見があるというようなテーマもある。例えば記者クラブ問題だ。新聞労連の運動方針は「記者クラブ改革」だが、メディアの現状を憂えている人ほど「記者クラブは廃止」の意見が強い。わたし自身は「廃止の前に、まだわたし達自身がやらねばならない改革が残っている」と思っているが、こうした考え方は「護送船団の発想」として批判を受ける。正直、気持ちの上でひるんでしまう。「匿名だったら、もっと気楽に書けるのに」と思うこともある。しかし、こうしたテーマは書かねばならないことだと思う。

 以上のようなことを考えていると、おのずから勢いよく書くテーマは組織に直接関係ないことばかりになりがちだ。最近のエントリーを自身で振り返ってみて思うのは「社会批評のような、評論家のような内容のものが増えている」ということだ。やはり気後れがあると認めざるをえない。
 だが、ブログを通じた1年間の経験は実り多いものだったと思う。わたしたち(メディアも労働組合も)の世界では「当たり前」と思っていたことが、外からはそうとは見られていないことが分かった、ということが幾つもあった。この経験を踏まえつつ、ブログを始めた原点に立ち返り、2年目の運営を続けていきたいと考えている。
 谷みどりさんの件に話を戻すと、ブログ閉鎖は残念でならないが、後に続く官僚が出てほしい。新聞というメディアに読者・市民との対話が必要なように、官公庁にも国民・市民との対話が必要だと思うからだ。「職務専念義務違反」は杓子定規に過ぎると思う。政策を分かりやすく紹介することは必要だ。経済産業省のホームページの一角にブログを設け、正規の広報活動の一環にすればいい。
 わたし自身は、帰宅後の私的な時間にブログを更新するのを原則としている。それも「個人の活動」としてのわたしのルールだ。

 exciteのカウンターによると、この1年間の訪問者数(05年4月4日~06年4月3日)は「32788」。訪問していただいた皆さま、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
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by news-worker | 2006-04-04 01:20 | 身辺雑事  

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