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奇策で名護市長は押し切られたが、決着ではない

 在日米軍再編問題で最大の焦点になっている米海兵隊・普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古地区への移設問題が新たな段階に入っている。7日夜に額賀防衛庁長官が名護市の島袋吉和市長との会談で、滑走路2本化という〝奇策〟を提示し、島袋市長が受け入れを表明。しかし、稲嶺恵一沖縄県知事は8日に額賀長官と会談し、この修正案を容認しないことを伝えたと報道されている。
 政府は市長の基本合意を取り付けたことで「地元との協議は整った」と強弁し、米国との最終報告書の取りまとめに向かうのは間違いないだろう。




 そもそも、今回の普天間飛行場移設を含め、昨年秋に日米両政府が合意した再編案に沖縄の民意は反対が圧倒的に多い。島袋市長は1月の市長選で初当選して間もないが、選挙戦の公約はやはり日米両政府案に「反対」だった。「修正次第では」ということも伝えられていたが、それでも、どういう案なら受け入れるのかは一切表明しないままの当選だった。今回の額賀長官との基本合意は、公約違反に当たる疑いはぬぐえない。
 仮に今回の島袋市長の行動が公約のうちだとしても、市長選では島袋氏の得票と、辺野古移設に絶対反対の公約を掲げた他の2候補の得票の合計は52%対48%と伯仲していた。防衛庁や政府がどんなに今回の修正案合意を過大評価しようとしても、選挙に示された名護市民の民意は厳然として存在している。また、沖縄県民の民意もこれまでの世論調査で歴然としている。
 そもそも、沖縄に限らず関係地の地元自治体に一切の説明のないまま政府間協議が進行し、「中間報告」として(日米両政府の合意文書にはこの用語は一切登場しないのだが)一方的に再編計画が昨年10月に公表された。そして今度は、地元住民に一切の説明がないまま、防衛庁長官が市長を複数回にわたって呼びつけ、密室で交渉を重ね、一方的に基本合意が公表された。
 3月以降、市長が防衛庁との〝裏交渉〟を進めるのを防ごうと、名護市役所には基地移設反対運動に取り組む市民らが連日、市長との面会を求めて詰め掛けたが、市長は一切応じてこなかったことを、現地の市民らがブログやホームページで発信している(例によってというべきか、沖縄県外のメディアではそうしたことはほとんど報道されていない)。
 だが、在日米軍再編問題はこれで決着ではない。稲嶺知事は反対で踏ん張るだろうし、海兵隊のグアム移転経費の負担をめぐる問題など、日米両政府間で思惑が大きくかい離しているテーマもある。普天間飛行場移設も、実際に辺野古で工事が始まるのはまだ先だ。流れを押し戻すために運動を高めていく余地と時間は残っている。
 目指すは「基地のない日本」「基地のない沖縄」。だれだって自分の生活圏に米軍がやってくるのはイヤに決まっている。日米安保体制と日米同盟を疑い、沖縄からも日本からも米軍基地がなくなる日を目指す。そのためにこれから必要なのは、ヤマト(本土)と沖縄の生活者同士の連帯であり、各地の反対運動のネットワーク化だと思う。

by news-worker | 2006-04-09 01:42 | 平和・憲法~沖縄  

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