質問に記者の世界観が問われている

 来春入社する新入社員の選考が本番を迎えている。最近の新聞社の採用試験では、模擬記者会見をやるところがある。採用にかかわる業務を担当したことはないが、「なるほどな」と思う。
 昨年秋や今年2月に、新聞労連が単独で、あるいは他のマスコミ産業労組と共催した就職フォーラムに参加した学生3人がきのうの午後、書記局を訪ねてきてくれた。最近の就職活動の経過報告を聞きながら、話題は模擬記者会見になった。
 「採用の上からは、何がポイントになるんでしょうか」と学生。「どんなシチュエーションかにもよるが、採用側は、君たちがどんな質問をするのか、を見ているのではないかな」と答えた。
 記者会見には、「メディアで取り上げてほしい」と、会見する側が強く欲求を持っている場合と、できれば大きく取り上げてほしくないのだが会見しないわけにはいかなくなった場合、という大きく分けて2つのパターンがある。いずれの場合でも、ニュースとして意味があるかどうかは、どんな質問をするかにも掛かってくる。
 後者の場合、典型的には企業や公的機関の不祥事だろう。この場合、質問はさして難しくない。「ほかに隠していることはないのか」「だれがどういう形で責任を示すのか」など、模擬試験の学生たちでも次々に質問は浮かぶと思う。
 さて、前者の場合。典型的な例は企業の新商品発表がその一つだろうか。「恐らく、会見する側は、いいことずくめの話しかしない。しかし、その中には、ぱっと見ただけでは分からない落とし穴があるかもしれない。新商品が、欠陥商品かもしれない。そういうことを意識しているかどうか、といったところが見られてるんじゃないかなあ」と学生たちには話したが、今ひとつ、ピンと来ていない様子。「記者会見に限った話ではないが、記者の仕事は、目の前にいる人の頭の中にある情報を、取材によって引き出し、社会に伝えること。だから、目の前にいる人が持っているであろう情報のうち、社会にとっては、何の情報がどんな意味を持っているかを考えて質問しなければならない。取材の質問というのは、言い方を変えれば、質問者の社会への向き合い方、世界観が問われる」と説明したが、学生たちの顔には「?」の表情が。

 けさ、学生のうちの一人の日記を見ていたら、昨日のことを書いていた。わたしと会った後、お互いに模擬記者会見の設定を想定して、〝対策会議〟をやったらしい。想定の一つは「ある電機メーカーのドライヤーが発火の原因となる火災が複数件発生。とある新聞社がこの事件を報道して、会社は急遽記者会見」。なかなかリアルだな、と思いつつ読み進む。
 まずは「防げた事故ではなかったのか?」という観点からの質問。不良品情報は報告されていなかったのかとか、不良品情報に基づいて製品の回収や修理の呼びかけなどの措置を取っていたのかなど。次に、コスト削減で生産管理がずさんになっていたのではないか、という観点からの質問。そのうちに「つまり、商品は会社の鏡なんだね」と気付いたことがつづられている。
 学生たちは記者の取材の意味について、少し理解してくれたようだ。
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by news-worker | 2006-04-12 10:33 | 新聞業界への就職  

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