「著作物再販、特殊指定は必要。でも今の新聞を残すかどうかは別の問題」~新聞労連販売集会

 もう1週間前のことになってしまったが、新聞労連は5月23、24の両日、東京で販売問題中央集会を開催した。メインテーマは公取委が進めている「新聞特殊指定」の見直し問題だが、特殊指定の存続をただ訴えるだけではなく、特殊指定問題と表裏一体の販売正常化の実現に向けて、新聞労連として意思統一を図る場にするために「特殊指定維持集会」ではなく「販売問題中央集会」とした。
 基調報告では、新聞販売会社の労組委員長である「今だけ委員長」さんに、新聞産業の労働組合は何をなすべきかの問題提起も含めて、販売問題の実情を報告してもらった。「今だけ委員長」さんがご自分のブログにエントリーを立てておられるので、そちらも参照されたい。



パネルディスカッションでは、消費者の立場から主婦連参与の和田正江さんにも参加していただいた。和田さんの指摘は分かりやすかった。「わたし自身、新聞が好きで、40年来の購読者。今は2紙を自宅で購読している。そういう長期購読者には何らサービスがない一方で、景品目当てに3カ月おきに購読紙を切り替える人たちがいる。一体、これはどういうことですか。月ぎめということで例えて言えば、40年×12カ月で約500個の品物を買っている客よりも、3個しか買わない客の方が優遇されている、ということです」。まさに新聞社の〝部数第一主義〟の矛盾を突いている。
 元新聞協会事務局職員で専修大助教授の山田健太さんには、憲法上の「知る権利」の側面から、著作物再販と特殊指定の意義をミニ講演で解説してもらった。一言で言うなら、「知る権利」を担保するために、情報の流通面で設けられた保護策ということになる。しかし、講演の最後に山田さんは「以上の話と、今ある皆さんの新聞を残すかどうかはまったく別の話」と指摘した。これもまた問題の本質を突いていると思う。今の新聞が国家政策的な保護に値するメディア足りえているのか、ということだ。新聞業界を挙げての特殊指定改廃反対、公取委攻撃に批判的な意見(その対象には新聞労連も含まれている)の大半は、現在の新聞のありようへの批判と重なっている。

 24日はわたしも含め、代表10人が公取委に特殊制定改廃反対の要請に出向いた。事務局の担当者に、率直な意見交換に応じていただいた。
 昨年11月に公取委が新聞を含めた特殊指定の見直し着手を表明して以降、新聞各紙は年明けから紙面で改廃反対の大々的なキャンペーンを展開している。地方議会も含めて、政界にも各新聞社が陳情、要請を重ね、地方議会で反対決議を打ち出したところもある。いまや、国会で公取委の権限に縛りをかけて特殊指定を存続させようとする議員立法が準備されるまでになっている。
 「特殊指定を廃止すると戸別配達網が崩壊するおそれがある」との新聞業界(新聞販売業界も含めて)の言葉足らずの主張に対し、公取委はHPで反論を示している。しかし、新聞紙面でのキャンペーンは、公取委主張に正面から対応していない。意見交換では、実際のところ本音ベースで新聞業界とどこまで協議が進んでいるのかを尋ねたが、見るべき前進がない、との印象を持った。公取委事務局の担当者は「当初表明した6月という時期にはこだわらない。しかし、あまりにもこちらの疑問に答えてもらえない状況が変わらないなら、公取委として判断を下さなければならなくなることもありうる」という趣旨の説明をした。そうなれば議員立法の独禁法改正案が上程され、政治力によって特殊指定存続が決まることになりかねない。
 当初は別働隊が新聞協会に申し入れ・意見交換に行くことを検討していたが、協会の重要会議と日程が重なり、要請書の提出だけになった。要請書の趣旨は、特殊指定の存続とは今ある販売ルールの厳守にほかならないこと、従って何としても販売正常化を達成すること、独禁法の適用除外に相応しいメディアとして新聞の信頼確立に努めること、公取委主張を正面から受け止め、読者に分かる形で公取委と協議を尽くすこと、などだ。

 「『知る権利』の保障のために著作物再販と特殊指定が必要なことと、今ある新聞を残すこととは別の問題」。山田健太さんの指摘が重く頭の中に残っている。労働組合にできること、やらなければならないことは、組織の内側から経営者を突き上げることだ。販売正常化の達成、部数第一主義からの脱却は、経営の決断があれば実現可能なはずだ。

参考・関連エントリー
新聞ジャーナリズムの再確立と販売正常化の即時達成が必要~特殊指定であらためて私見(5月7日)
特殊指定の新聞労連特別決議(4月22日)
「特殊指定」問題の本質を見極めなければならない(4月9日)
新聞の再販制度維持が「業界エゴ」でないために(2月21日)
特殊指定改廃に反対する新聞労連声明(05年12月20日)
それでも新聞再販は必要(05年11月8日)
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by news-worker | 2006-05-29 17:01 | メディア  

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