宮古毎日労組が初の団体交渉

 5月26日からの沖縄出張を終え、先ほど帰宅した。
 宮古島で日刊紙約1万6千部を発行している宮古毎日新聞社の従業員が労働組合を結成したことは、以前のエントリーで紹介した。きのう(5月30日)、初の団体交渉が開かれ、新聞労連からわたし、沖縄県マスコミ労組協議会から2人の計3人も、宮古毎日労組の上部団体としての立場で出席した。宮古毎日労組は委員長、副委員長、書記長の3人。会社側は社長ら役員3人が出席した。
団交は予定時間を大幅に上回って2時間以上に及んだ。要求への回答という観点から見るなら、初団交の成果は満足のいくレベルのものではなかったかもしれない。組合は結成通告と同時に大きく分けて6項目の要求書も会社に提出していたが、回答の大半は「検討中」「考えさせてくれ」だった。しかし、社長はいくつか、重要なことを口にした。



 例えば「業務上のことは現場責任者を通じて行うように」との要求。この要求自体、普通の企業の感覚では何のことか分からないかもしれないが、宮古毎日新聞社では管理職が実態として、業務上の判断・決定の権限を持たされていない(と従業員たちは見ている)。ラインの職制に権限と責任を持たせ、社長は重要な経営判断事項に絞って現場責任者に指示を下す、という仕組みに改めてほしい、という要求だ。つまりはワンマン経営もほどほどにし、もっと管理職以下の従業員を信用してほしい、ということだ。
 この要求に対し、社長は団交で「その点はわたしの考えとも一致する。ぜひ、そうしたい、そうあらねばならない」との趣旨のことを述べた。一方で「管理職が管理を怠っているから、本来は管理職がやらねばならないことを自分がやっている」と、まるでワンマン経営は管理職が無能なため、と言わんばかりの主張もした。本来、管理職の従業員を管理するのは経営者のはずだ。管理職が業務管理を怠ったとして、その責任は経営者に帰せられるべきであり、管理職の怠慢が改善されないということは、すなわち経営者が無能だということにほかならない。社長の説明には正直、ウンザリする思いだったが、そのことはともかくとして、社長が「業務上のことは現場責任者を通じて」というあり方に改めたい、と明言したことの意味は大きい。労組に示した経営上の公約である。
 また、「賃金決定の仕組みを開示せよ」という要求に対しては「現状では、賃金の制度はない。『あの人はこれぐらいだから、この人にはいくら』と相対的に決めるほかない」と、意外なくらいに率直に実情を説明した。「賃金制度を確立せよ」との要求に対しても、「絶対に必要だとわたしも考えている」と、この点でも組合と考えが一致すると強調した。これもまた経営上の公約だ。実現を迫って行きたい。

 その他の要求項目に対しては、会社側の回答はほとんどが「検討中」「考えさせてほしい」に終始し、次回以降の団交に持ち越すこととなった。中でも、「組合関連文書の社内配布」や「会議室の使用」「組合掲示板の設置」「組合事務所の設置」など労働組合活動の保障を求めた要求に会社側は強く難色を示した。会社側は再三、「突然、組合ができたと通告された。こちらも色々調べる必要がある」と繰り返した。社長は「これらのことを認めろと、どこか法律に書いてあるのか」とまで言った。
 これも正直に言って、あきれてしまった。法律に書いてあることだけをやればいいのか? それでは法律に書いていないことは何をやってもいい、ということにもなりかねない。労働組合という権利は、それを行使しようとすれば、さまざまな現実的な活動が必要になる。組合ニュースをつくって組合員に配布したり、執行委員会を開いたり、そういう作業が付随する。そうした具体的な労働組合としての活動、行為が保障されてはじめて、労働組合という権利が保障されることになる。
 文書配布や会議室の利用を認めたり、掲示板、組合の事務スペースを提供したとしても、会社に金銭的な負担が発生するわけでもない。企業内組合なら、企業がこれくらいの便宜を労働組合に供与するのに何ら問題はない。
 逆に、企業側に組合の活動を妨害し、組合を弱体化させようという魂胆があるならば、これらの要求を拒否するのは効果的だ。しかし、それは間違いなく不当労働行為に当たる。「不当労働行為だ」と騒がれるのが嫌なら、回答を引き延ばすという手もあるかもしれないが、それもやはり不当労働行為だ。

 相当に激しい応酬もあった初の団交だったが、どこまで要求を勝ち取ったかよりも、むしろ団交が開催され、組合3役が会社側に組合員の総意を次々と突きつけていったこと、従業員のだれもが今まで社長に面と向かって言えなかったことが団体交渉だからこそ言えた、という点に大きな意義があったと思う。団交の終わりに、宮古毎日労組の委員長(以前のエントリーで紹介したように、彼は正社員から契約社員にさせられた)が組合側を代表してあいさつした。彼は「きょうは…」と言ったきり胸が詰まってしまった。そして「社長とこういう話ができたことが嬉しい。今までは、話そうにも話せなかった」と続けた。会社側は組合不信、従業員不信に陥っているのかもしれない。しかし、なぜ労働組合ができたのか、そう疑問に思っているのであれば、組合側から答えは明確に示している。
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by news-worker | 2006-05-31 22:18 | 宮古毎日新聞労組の挑戦  

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