公取委の特殊指定見直し断念の背景要因に、世論の高まりを数えるには無理がある

 新聞の特殊指定をめぐり、公正取引委員会は2日の記者会見で、結論を見送ることを正式に表明した。これを伝える新聞各紙の記事は、「当然の結果」というトーンが目立つ。しかし、今回の結末に対して、世論の後押しがあったからだと新聞各社が本気で考えているとしたら、それは新聞社の世論からの遊離以外の何者でもない、と思う。そのことを連想させるデータがある。
 以前のエントリーでも紹介したが、新聞労連は5月23、24の両日、販売問題中央集会を東京で開催した。その際、特殊指定問題の討議の資料にするために、ゴールデンウイーク後に全国の新聞労連のブロック組織(地方連合会=地連)に呼びかけ、緊急の街頭アンケートを行った。限られた時間の中で、東京、関東、北信越、中国、四国、九州の各地連から計558人分の回答が集まった(東北地連もアンケートを実施したが、質問項目を独自に作成しているため、集計は別にした)。
 質問は4つ。いずれも「はい」か「いいえ」の二者択一とした。

①自宅で新聞を購読していますか
 「はい」 470人(84・2%)
 「いいえ」 88人(15・8%)
②新聞の「特殊指定」をご存知ですか
 「はい」 131人(23・5%)
 「いいえ」427人(76・5%)
③新聞の再販制度をご存知ですか
 「はい」 140人(25・1%)
 「いいえ」418人(74・9%)
④公取委の特殊指定見直しをご存知ですか
 「はい」 147人(26・3%)
 「いいえ」411人(73・7%)



 あくまでも街頭アンケートであり、世論調査のように精度を追求して行った調査ではない。しかし、それでもこの結果は、新聞販売の独禁法上の論議は一般にはまだまだ意識されていない、という事実を示していると思う。しかも、調査の時期は5月上旬から中旬にかけて。つまり公取委の見直し方針に反対の立場から、新聞各紙がさかんにキャンペーン特集や関連記事を掲載した後のことだ。
 この街頭アンケート結果をもって、「一般の関心が高いとは言えず、世論のニーズもないのに『独禁法上の例外は認めない』との固有の思惑から見直しを言い出したこと自体に無理があった」と、公取委を批判することも可能かもしれない。しかし、やはり新聞業界(販売業界も含めて)の側は、虚心坦懐に受け止めるべきだと考える。公取委の見直し断念の背景要因として、世論の高まりを数えることには無理がある、と。
 この街頭アンケートの結果は、既に新聞労連から新聞協会と公取委の双方に提供している。近く、新聞労連のホームページにもアップする。

 公取委が見直しの結論見送りを正式に表明した2日、新聞労連も見解をまとめて声明として公表した。以下に紹介したい。

 新聞の特殊指定改廃見合わせに対する声明

 6月2日の自民党独占禁止法調査会で公正取引委員会は、新聞の特殊指定改廃について、今回は結論を見合わせることを表明した。昨年11月に公取委が特殊指定見直しを表明して以来、議論が続いてきたが新聞については当面は残ることになる。この結論自体は、私たちが求めてきたことと一致する。しかし、この結論に至る議論の経緯には、問題が多いと考える。
 新聞労連は特殊指定改廃にこれまで一貫して反対してきた。「新聞の同一題号同一価格」を定めたこの制度が廃止されれば、購読料値下げによる乱売合戦が予想されるからだ。現在でも規制を超えた景品提供や契約期間に応じた無料購読(無代紙)が後を絶たず、これに値引き合戦が加われば販売現場は混迷を極める。資本力の弱い新聞社は次々と倒れ、多様な言論を形成してきた新聞が少数の新聞に淘汰され、民主主義が危機にさらされるだろう。
 私たちはこれまでの議論から、特殊指定維持を求めるには販売正常化が実現しなければ理解が得られないと訴えてきた。新聞労連が調査したところ、新聞に対する意見は「紙面内容」よりも「新聞販売への苦情」が圧倒的に多かった。
 新聞労連はこれまで新聞協会に販売正常化の早期実現を求め、公取委には特殊指定の堅持を訴えてきた。今回、公取委が出した結論は私たちの主張に沿ったものだが、問題点も多い。これまで公取委は新聞協会との話し合いで「実態の説明」を求めてきたが、協会側は明確な回答を避けてきた。現状を説明し、矛盾点の是正へどのように取り組むかが焦点だった。
 一方、公取委の方針には与野党を問わず全政党が反対し、自民、公明の両党は独占禁止法に特殊指定の内容を盛り込んだ改正案をまとめ、国会提出に向けた手続きを進めてきた。公取委が見合わせると判断した背景にはこうした政界の動きがあるといわれている。業界側と「かみ合わない」として議論を打ち切った公取委。独禁法の改正で公取委の権限を封じ込めようとした政界。本質的な議論を置き去りに、何より読者・市民の意見を顧みないままの政治癒着といえる。
 さらに公取委が「見送り」を最初に伝えたのは自民党で、新聞業界の窓口となっている新聞協会ではなかった。このことは問題の本質からすでに新聞業界が、一歩外に押し出されていることを表している。公取委が議論すべき相手はいつの間にか政界にすり替わっていた。
 今回の議論では販売正常化に関する問題で前進したことはほとんどなかった。公取委が説明を求めても、新聞業界が明確に答えなかったからだ。公取委の結論はあくまでも通過点ととらえなければならない。そして私たちがめざすのは販売正常化の実現である。「言論・表現の自由」「知る権利」を守る責務を果たすことで新聞の公共性を高め、新聞ジャーナリズムの信頼を構築することが急務である。新聞労連の取り組みはこれからが正念場だ。

2006年6月2日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 美浦克教
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by news-worker | 2006-06-04 21:07 | メディア  

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