正社員組合の意識が変わらない~厚労省の労組調査から

 沖縄から帰京の途中、沖縄の地元紙2紙に掲載された「労組は依然、正社員重視」の記事を読んだ。共同通信の出稿だった。
(引用開始)
労組は依然、正社員重視 組織化の取り組みも進まず [ 07月14日 17時15分 ] 共同通信
 パートや派遣社員が増える中、多くの労働組合はその処遇改善よりも、正社員の雇用や労働条件の確保を優先して考えていることが厚生労働省の調査で14日分かった。
 組織率が低下し非正社員の組織化が課題とされる労組だが、組織化の強化などに取り組んでいるのは30%以下。正社員重視の傾向が変わらないことが浮かび上がった。
 調査は昨年、組合員が100人以上いる全国の労組から約2700を抽出してパート、契約社員、派遣社員についての実態や意識を聞いた。
(引用終わり)

 厚労省が毎年実施している「労働組合活動実態調査結果」で、その概要は厚労省のHPにアップされている。その中に「就業形態の多様化と労働組合の対応に関する事項」という項目があって、共同通信の記事はこれを元にしている。



 ナマのデータを紹介すると、労働組合(ここでは正社員組合と考えていい)が自社で働く非正規雇用の人たちに対する取り組みをしているか否かでは、取り組みを「行っている」と回答した組合は、パートタイムで25・5%、契約社員では30・0%、派遣社員ではわずかに14・9%だった。
 派遣社員への取り組みが契約社員と比べ少ないのは、派遣社員の場合は雇用契約が派遣元と結ばれているために、組合にとっては交渉が複雑になるからだろう。契約社員、パートタイムは自社の直雇用であり、労働組合にとっても、従来の団体交渉の枠内で取り上げることが可能だ。
 行っている取り組みの具体的な内容では、パートタイム、契約社員とも「労働条件・処遇の改善要求」がともにトップで、パートタイムでは「相談窓口の設置、アンケート等での実態把握」「組織化の強化」、契約社員では「契約労働者の導入についての労使協議」「組織化の強化」と続く。
 一方、派遣社員では、「派遣労働者の導入についての労使協議」「相談窓口の設置、アンケート等での実態把握」「労働条件、処遇の改善要求」の順となっている。
 派遣社員、契約社員ともそうだが、既存の労働組合が行う「導入についての労使協議」は、決して派遣社員や契約社員の当事者のためとは限らない。自分たち正社員の賃金や労働条件に影響があるのかどうかを確認するために行うケースが、実は多数を占めるのではないだろうか。自分たちに影響がないことさえはっきりすれば、後は「会社の好きなように」という組合が多いことは、体験的に感じている。
 こうした取り組みをも、労働組合の非正規雇用労働者への対策に数えることには、わたしは抵抗を感じる。決して「同じ職場で働く仲間」とは思っていないからだ。共同通信の記事は「組織化の強化などに取り組んでいるのは30%以下。正社員重視の傾向が変わらないことが浮かび上がった」としているが、実態としては「30%」をはるかに下回っているだろう。

 既存の労組の執行部に問うてみたい。「全体が30%以下だから、わが組合も何もできなくても、しなくても仕方がない」と考えるのか。
 理不尽な雇い止めに遭い、救済を求めて争議入りした元派遣社員の労働者を、既存の正社員組合が見殺しにしているケースがある。合理化によって削減された正社員に置き換えられて、正社員に負けずに働いてきた。更新を重ねて5年、9年と働いてきた。そこまでくれば、この先も同じように働ける、と考えても無理はないではないか。だからこそ、正社員よりも劣位の労働条件にも甘んじてきた。しかし、派遣先は「期間満了」だけを理由に雇い止めとした。形式上明確な違法行為を指摘するのは困難かもしれないが、「派遣社員」という雇用形態の立法趣旨というか、「有期雇用は原則3年」の日本の労働法制の趣旨に照らせば、脱法行為だ。まさにCSRが問われる。
 その理不尽な仕打ちが、いずれはわが身に降りかかってきかねないことを、正社員組合は理解しなければならない。「30%以下」に入っていない労働組合は、数の上では多数派かもしれないが、そうした正社員組合の「自分たちの労働条件がすべて」との「勝ち組特権意識」が企業による非正規労働者の権利蹂躙を後押ししている。ある意味で完璧な「御用組合」だ。しかし、そうやって自らの首も絞め上げられつつある。そうではないか。安くてよく働き、いつでも首が切れる労働者がたくさん増えてきているのに、だれがいつまでもワガママな正社員に高い賃金を払い続けようとするだろうか。
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by news-worker | 2006-07-16 11:37 | 労働組合  

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