「サービス向上」に隠れた人員削減=合理化は何をもたらすのか~JALの「クラスJ」拡大

 経済ニュースとして報道もされたようだが、日本航空(JAL)が国内線の上級座席「クラスJ」設置を、現在のボーイング747(いわゆるジャンボジェット)などの大型機、中型機から小型機にも拡大する。普通座席に比べて運賃は1000円割高になるが、シートがひと回り広く、リクライニングもフットレスト付きで楽と言えば楽。飲み物のほかに、茶菓子が一つ付く。設置の拡大は、収益増につなげるための国内線サービス強化ということだろう。
c0070855_2584281.jpg この「クラスJ」が新たに設置される小型機のひとつに「MD90」という機種がある。写真でも分かるように、胴体が細長いのが特徴。機内のシート配列はこのようになっている。
 本題はここからだ。航空関係の労組の共闘組織として、航空労組連絡会(航空連)という組織がある。そこの旧知の方から先日、メールをいただいた。このMD90へのクラスJ設置によって、会社(JAL)は従来4人編成だった客室乗務員を3人編成に減らす方針なのだという。これはJALのホームページにも、報道にも出ていない。



 理由は座席数の減少。どうやら、通常は1列5席のところを「クラスJ」では1列4席にするようなので、総座席数は166席から150席に減る。会社は「乗客50人当たりに客室乗務員1人」の規定を根拠にしているという。
 よく知られているように、客室乗務員は接客が本分ではない。主たる業務は保安であり、万が一の事態のときには乗客の避難誘導に大きな負担と責任を負う。その保安要員が「乗客166人に4人」すなわち「乗客42人に1人」から「50人に1人」となる。確かに規定には違反していない。しかし、サービス強化といいながら、クラスJ拡大による会社にとっての最大の効果が、実は人件費の削減、それも安全面に密接にかかわる人員の削減にある、ということではないだろうか。
 わたしもMD90に乗ったことがある。確かに、狭いわりに胴体が長い。乗客の1人としては、この会社方針には少なからず不安を覚える。

 この会社の方針に対して、航空連は主として安全確保の観点から見直しを求めている。以下に、その主張をご紹介したい。航空連作製の教宣ビラから引用する。
(引用開始)
一人が2つのドアを担当・緊急時の安全は?
 座席数が減っても、機材の大きさ、客室の広さ、脱出口の数等は変更ありません。「編成数が削減されると、緊急時の脱出誘導に支障がでる」との声が多数、同型機に乗務する客室乗務員からあがっています。これまで2名だった客室前方の客室乗務員(CA)が1名になることにより、一人で前方2つのドアの開扉と脱出援助、緊急時のコックピットとの連絡、後方担当の客室乗務員への指示、パニックコントロール等を一人で行うことになり、緊急時の業務負担は相当なものとなります。会社は「旅客50人にCA1人というサーキュラー、また、メーカーの脱出テストもクリアしている」としていますが、メーカーの脱出テストは乗客172名に対しCA4名で実施されたものとのことです。現場は「乗客150名に対しCA3名で脱出テストを行わなければ安全が確保されているとは言えない」と問題指摘しています。

日常の保安業務にも不安が
 これまで、脱出シュートのセットの確認、各コンパートメントの施錠確認など、安全にかかわる重要なチェックはCA2名で実施する「ダブルチェック」が基本でした。しかし今回の提案では、このダブルチェックの発想がなくなりました。また、1名の担当範囲が拡大されることから、不審者や急病人の発見、手荷物の収納処理、異臭・異音の発見等にも漏れが生じるのではないかという不安の声が寄せられています。

サービス品質の低下も指摘されています
 クラスJ導入により、よりきめ細やかなサービスが求められますが、編成削減でサービス品質の低下が懸念されます。MD90型機は比較的短距離路線を運航していますが、4名でも時間的余裕がない中でさらに3名に削減されれば、お客様の立場にたったサービスをしたくても出来ない状況になります。私たちはサービスの品質を保つ上でも、編成数の削減には反対です。

労働組合と協議しない経営姿勢も問題
 「編成数を決定するのは会社」として、現場の代表である労働組合と合意もないまま進めようとする姿勢も非常に問題です。「安全、サービスの両面から問題が多い」と指摘している現場の声に耳を傾け、この編成削減を撤回するべきです。
(引用終わり)

 いかがだろうか。わたしには、組合の懸念には十分な理由があるように思えるのだが。
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by news-worker | 2006-08-20 03:19 | 労働組合  

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