「ビラまき逮捕」に無罪は出たが…

 いわゆる「ビラまき逮捕事件」のうち、2004年12月に東京都葛飾区のマンションで共産党の議会報告などを各戸に配布していて、住居侵入の現行犯で逮捕、起訴された男性の判決公判が28日、東京地裁で開かれ、無罪が言い渡された。(共同通信毎日新聞
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政党ビラ配布、被告無罪 東京地裁で2件目 [ 08月28日 13時15分 ]
共同通信
 共産党のビラを配るために東京都葛飾区のマンションに立ち入り、住居侵入の罪に問われた僧侶荒川庸生被告(58)=葛飾区=に対し、東京地裁は28日、無罪(求刑罰金10万円)の判決を言い渡した。
 大島隆明裁判長は「プライバシーや防犯意識の高まりを考慮しても、廊下など共用部分への立ち入りが処罰の対象とする社会通念は確立していない。マンションの立ち入り拒否の掲示も商業ビラが対象で、立ち入りに正当な理由がないとはいえない」として、同罪の成立を認めなかった。
 2004年以降、東京都で摘発が4件相次いだ政党などのビラ配布事件で、無罪判決は立川市の自衛隊宿舎への「イラク派兵反対」ビラ配布事件の1審(控訴審で逆転有罪)に続き2件目。
(引用終わり)

 「無罪」の結論には、正直ホッとする思いだ。しかし、実はこの判決は、喜んでばかりもいられない要素を含んでいる。以下、毎日新聞の記事の要の部分を引用する。
判決はまず、マンションへの立ち入りが許されるかどうかについて「他人の住居の平穏を不当に害することは許されず、憲法だけを根拠に直ちに正当化することは困難。目的や態様に照らし、法秩序全体の見地から社会通念上容認されざる行為と言えるか否かによって判断するほかない」と指摘した。
 そのうえで(1)政治的主張のビラ受領で、住民の平穏が侵害されるとの不安感を抱くことは少ない(2)配布の際の滞在時間は7、8分程度でプライバシー侵害の程度もわずか(3)ビラ投かんでの立件はほとんどない――などと判断。「立ち入り拒否の張り紙は商業ビラの投かん禁止とも読み取れ、マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」として、正当な理由のない違法な立ち入り行為に当たらないと結論付けた。

 判決は、マンションの共有部分への立ち入りが即座に処罰対象になるとの社会通念は確立していない、とする一方で、住居侵入罪よりも憲法21条の表現の自由が絶対的に優位あるとも認めていない。「マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」ということは、逆に言えば、仮に政治的主張のビラであっても、マンション住民の総意として拒否し、その意向を明示していれば、住居侵入罪を構成するということになる。
 「無罪」の結論はもちろん歓迎すべきだが、この判決は住居侵入罪の成立について丁寧に、しかし実は形式的に判断を示しただけであり、決して「表現の自由」を重視した判断ではないと思う。その意味では、自衛隊官舎にイラク派遣反対のビラを投函した市民グループの3人が逆転有罪となった、いわゆる「立川テント村事件」の東京高裁判決と同じ発想のもとにあると言ってもいいのではないかと思う。立ち入り拒否の掲示の認定が変われば、つまり、部外者に対して商業ビラであれ政治ビラであれ立ち入り拒否を明示していた、との認定ならば有罪でもおかしくない。恐らく、検察側は控訴し、その辺を補充立証するだろう。
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by news-worker | 2006-08-29 01:08 | 平和・憲法  

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