2005年 04月 24日 ( 1 )

 

サマワ取材中止

 少し古い話になるが、4月19日付の朝刊各紙はライブドアとフジテレビの和解のニュースを大展開。その陰に、まさに隠れるようにひっそりと「防衛庁が報道各社のサマワ取材を中止」の記事が載った。週末に防衛記者会(防衛庁の記者クラブ)加盟の新聞、通信、放送各社の記者がクウェートから自衛隊機でイラク入りし、サマワの陸自宿営地に滞在して派遣部隊の活動を取材する計画だったが、防衛庁側が「不測の事態を否定できない」として中止を決めた、というのが概要だ。
 イラクへの自衛隊派遣とその報道をめぐっては、昨年1月に先遣隊が現地入りした当初からさまざまな問題があり、結果として、現在はサマワに日本メディアの日本人記者は不在の状態が続いている。そのこと自体が、「知る権利」に奉仕するメディアの怠慢だとして批判も出ている。
 今回、予定されていた取材はいわゆる「従軍方式」に当たる。その是非は、わたしには明快な結論が出せない。取材のあり方としてメリット、デメリットがそれぞれあるからだ。強いて言えば、「従軍方式」であろうと積極的意義を見出したいと考える。
 最大のメリットは取材者の安全を一定程度、確保しながら、曲がりなりにも現地派遣部隊を直接、取材できることだ。その裏返しだが、防衛庁、自衛隊から種々の制約を受け、自由な取材が担保されないことが最大のデメリットになる。
 サマワに自社記者を派遣していない現状で、新聞、通信、放送各社は、イラク人の契約記者からの情報で報道をつないでいる。しかし、その方法では、自衛隊派遣部隊の動向は本当のところは分からない。各メディアとも、東京の防衛庁取材にも力を入れているが、それで本当にイラクの自衛隊派遣部隊の実像に迫れるかというと、限界があるだろう。防衛庁の「大本営発表」に便乗しているだけではないのか、という批判には答えきれない。
 しかし、イラクの現状、すなわち外国人であるというだけで拉致、殺害されかねない実情を考えると、メディアが取材者の安全を自力で100%確保しつつ、サマワで取材を展開することも困難だ。メディア企業の労働組合のスタンスとしても、危険地域で組合員である記者が取材を展開することに対しては、慎重に考えざるを得ない。
 可能ならば、メディアが自衛隊の保護下に入らずに、自由な取材をサマワで展開できればベストだ。しかしそれが叶わない以上、次善の策として、自衛隊の保護下で取材することも致し方ないと思う。イラクへの自衛隊派遣が違憲かどうかを論じることとは異質の話であり、そこに自衛隊がいる限り、日本のメディアは直接取材を第一に考えなければいけないからだ。「従軍方式」でもいい。自衛隊宿営地の様子、サマワ市内の様子を肌で感じるだけも、大本営発表をそのまま報道することに比べればましだ。
 もう一つの問題は、今回の取材中止の経緯がはっきりしていないことだ。そもそも、そうした取材が計画されていたこと自体、中止になって初めて報道された。事前に報道がなかった、あるいは報道できなかったことは、取材者の安全の見地から理解できる。わたしが当事者でも、そうしたと思う。しかし、経験から言えば、陸上自衛隊の制服組の現場は、イラク派遣に関しては一貫して積極広報のスタンスだ。取材中止の背景として、サマワの治安維持に当たるオーストラリア軍が展開の真っ最中の時期と重なる、などの釈明がされているが、陸自の現場とは異なる思惑が、防衛庁背広組ないしは首相官邸になかったかどうか。検証作業の紙面化がなければ、「今回の取材計画は防衛庁当局の情報操作に乗っかっていただけ」との批判に、メディア、報道各社は抗しきれない。
[PR]

by news-worker | 2005-04-24 22:31 | メディア