2005年 09月 21日 ( 1 )

 

朝日新聞の虚偽メモ検証記事

 いささか古い話になるが、朝日新聞が長野総局記者の虚偽メモ問題の社内検証を15日付朝刊で3ページにわたり掲載した。
 問題は大きく2つに分かれる。長野総局記者がなぜ取材していないのに取材したかのようなメモを作成したのか。もう一つは、メモを基に政治部が作成し、誤報となった記事が、なぜ社内で止められなかったかだ。検証結果として朝日の記事は、社内の連絡、声がけが不十分だったことを挙げている。
 長野総局に政治部から寄せられた取材依頼のメールは「田中康夫知事と亀井静香氏が長野県内で会ったとの情報がある。関連情報があればよろしく」との程度の内容だった。総局長からメールを転送された記者は、ある程度、政治部で裏付けが取れた情報ではないかと思っていたという。だから、総局長から「あれどうなった」と聞かれ、あまり深く考えずに(わたしはそういう印象を受けたのだが)メモをつくった。
 「特ダネだ」というわけでもない。「自分はこれだけ仕事ができる」とアピールしたかったわけでもない。日常的な目の前の雑事を一つ片付ける、という感覚だったのか。
 一方で、メモを受け取った政治部の側からすると、「やはり情報は正確だった」と考えても仕方がない。まさか、でっち上げメモが上がってくるとは考えもしないのが普通だからだ。
 検証記事は事実経過や総局記者の心情については詳しい。しかし、なぜ組織の風通しが悪いのかについては歯切れが悪い、という印象を受けた。本当は、記者が日常的に置かれている勤務の実態まで読者に理解してもらった上でないと、説明は難しい。
 検証記事では、総局の泊まり勤務者は午後5時までに総局に入り、出稿記事の校閲などをやることになっているとして、朝日社内の合理化の一端に触れている。恐らく読者は、記者は外に出て取材するのが仕事、というイメージを持っているだろう。しかし、特に地方の支社、総局、支局では記者も色々な仕事をこなす。少人数の職場ほどそうだ。
 地方紙も含め、新聞社も全国どこでも人員削減と長時間過密労働が進んでいる。世間と変わりがない。だからそれを免罪符にするつもりは毛頭ない。しかし、そうした勤務実態までリアルに開示しないと、読者の「なぜ」には答えきれないのではないか。そういう意味で、今回の問題は広く「新聞の信頼」という観点からみたとき、朝日新聞だけの問題にとどまらない要素をはらんでいると思う。
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by news-worker | 2005-09-21 10:41 | メディア