2006年 08月 01日 ( 1 )

 

朝日の偽装請負報道を評価したい

 朝日新聞がきのう(7月31日)の朝刊から、立て続けに1面で「偽装請負」を取り上げている(東京本社発行最終版)。それぞれ書き出しの一部を引用する。

 「『偽装請負』労働が製造業で横行 実質派遣、簡単にクビ」=7月31日付朝刊
 大手製造業の工場で「偽装請負」と呼ばれる違法な労働形態が広がっている。この3年で労働局から違法と認定された企業の中には、キヤノン、日立製作所など日本を代表する企業の名もある。メーカーにとっては、外部から受け入れた労働者を低賃金で、安全責任もあいまいなまま使えるうえ、要らなくなったら簡単にクビを切れる好都合な仕組みだ。「労働力の使い捨て」ともいえる実態がものづくりの現場に大規模に定着した。

 「キヤノン、偽装請負一掃へ 数百人を正社員に」=7月31日付夕刊
 キヤノンは、年内をめどに請負業者との契約を見直して派遣に切り替えるなど、偽装請負の完全解消をめざした対策に取り組む。8月1日付で内田恒二社長を委員長とする「外部要員管理適正化委員会」を設置する。また、グループ全体で2万人以上いる請負や派遣労働者のうち、数百人を正社員に採用する方針だ。

 「松下系社員、請負会社に大量出向 違法性回避策?」=8月1日付朝刊
 松下電器産業のプラズマテレビをつくる「松下プラズマディスプレイ(MPDP)」が今年5月、茨木工場(大阪府茨木市)内でパネル製造を委託する請負会社に、同工場勤務の松下社員を大量に出向させたことが分かった。同工場は昨年7月、請負労働者を直接指揮命令する「偽装請負」で行政指導を受けている。今回の出向は、これまでの労働実態を変えないまま、松下社員による指揮命令の違法性を形式的に回避したものだとの見方が出ている。この手法が「合法」と認められれば他の製造大手も追随する可能性があり、大阪労働局は近く実態調査に乗り出す。

 記事の出稿元は社会部だったり経済部だったり分かれているから、全社的な編集方針でこの問題を大きく取り上げることを決めた、ということだろう。よく「全く守られない法律の代表例は道路交通法と労働基準法」と言われる。それくらい、企業の側にとっては労働諸法制は軽い存在だ。あるいは、利益の前にはいちいち気にしていられない、ということかもしれない。「偽装請負」は一般にはまだ知られていないが、「多様な雇用形態」をうたい文句に雇用面での規制緩和が進んだ結果出現した、派遣社員の先を行く「買い叩き雇用」(ほかにうまい表現を思いつかないが)だ。「格差社会」の雇用面での典型事例と言ってもいい。実はテレビ局などメディアの現場にも広がっている。
 労働行政当局から是正の処分、指導を受けたのなら、立派な違法行為の認定だ。規制緩和はこの5年間は小泉首相流に「構造改革」と呼ばれたが、産業界では雇用面でモラルハザードが起きた、ということだ。朝日の一連の記事は、「構造改革」や「格差社会」を考える上でのいい材料を読者に提供している。
 処分、指導を受けた企業名が公表されていなくても、メディアの責任で報じてもいい。そういう「抜きあい」が記事として評価されるようになれば、企業のモラルも向上し、社会は変わりうるかもしれない。

追記 8月1日午後
 「全く守られない法律の代表例は道路交通法と労働基準法」と言われる。これは報道にも反映されていて、スピード違反がいちいち記事にならないのと同じように、雇用の現場で深刻な事態が進行してきたのにメディアの関心は低かった。だからこそ、今回の朝日の報道姿勢は注目に値する。メディア他社は朝日の報道をどうとらえているだろうか。 
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by news-worker | 2006-08-01 10:21 | メディア