2006年 09月 03日 ( 2 )

 

「安保の見える丘」に柵~米軍基地をめぐる表現の自由の危機ではないか

 先週後半は忙しくて、きょうになってネットで気付いたのだが、沖縄の米空軍嘉手納基地周辺で、こんなことが起きている(沖縄タイムス8月30日付朝刊記事)。
(引用開始)
「安保の丘」に柵/市民団体反発「抗議の声遠くなる」
 【嘉手納】防衛施設庁は二十九日、米軍嘉手納基地を一望できる通称・安保の見える丘=嘉手納町屋良=に柵を設置した。同庁は「不法投棄の防止が目的。立ち入りは制限しない」と説明するが、市民団体などから「平和学習の場を遠ざけることにならないか」と反発する声が上がっている。
 柵は高さ約一・五メートルで、出入りできる幅約一・二メートルの門扉がある。工事は二十八日に始まり、二十九日に終了した。県道74号沿いの約千三百メートルにも設置している。予算は総額約千三百六十五万円。設置理由について、同庁は「使われなくなった黙認耕作地に家具や電化製品などの廃棄物が投棄されることが多く、周囲の景観を損ねている」としている。
(引用終わり)

 沖縄タイムスは9月1日付朝刊にも、那覇防衛施設局に取材した続報記事を掲載している。
(引用開始)
「安保の丘」閉鎖言及/防衛施設局 柵開閉「将来は米軍が判断」
 【嘉手納】米軍嘉手納基地を一望できる嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」に設置された柵について、那覇防衛施設局は三十一日、本紙の取材に対し「将来は保安上の必要性を踏まえ米軍が判断する」と回答、門扉を閉ざして立ち入りを規制する可能性に初めて言及した。丘は米軍が「スパイ・ヒル」などと呼び、閉鎖を模索してきた。住民の立場からは不透明な基地の実態を監視するのに欠かせない拠点で、市民団体は「県民に目隠しするものだ」と反発している。
 丘の周辺は、米軍への提供区域に当たる。同局は三十一日、柵を設置した意図について「ごみの不法投棄を防止する。これまでの経緯を勘案し、一般の方々の出入りが可能なように門扉を設置した」と、これまでの説明を繰り返した。
 さらに、「さまざまな意見があることは米軍も十分承知しており、平常時に閉める考えはない」と強調。ところが、将来の見通しについては「その時々の個別具体的な状況において保安上の必要性を踏まえ、米軍が判断する」と明言した。
(引用終わり)

 在日米軍再編でも、米軍の世界戦略の中に占める嘉手納基地の位置づけは高まりこそすれ、低下することはない。北朝鮮のミサイル発射実験を受けて、PAC3配備も浮上。そういうタイミングの中での出来事だ。
 現地に行くと分かるが、今は「安保の見える丘」と道を隔てて、4階建ての「道の駅嘉手納」が建っている。屋上は一般に開放されていて、実は嘉手納基地の中を見るだけなら、こっちの方がよく見える。現に、望遠レンズ付きカメラを構える航空(軍事)マニアの姿も少なくない(ちなみにこの建物の3階だったか2階だったかは嘉手納町の資料館になっていて、戦前の嘉手納、あるいは沖縄の様子をうかがい知ることができる。機会があれば見学をお奨めする)。だから、基地の定点観測だけなら、「安保の見える丘」が閉鎖されても、さほど大きな影響はないかもしれない。
 閉鎖がなぜ問題かと言えば、この場所が、基地の撤去を求める意思表示の場としての象徴的な意味を持つからだ。
 米国と米軍は、絶対に嘉手納基地を手放さないだろうし、在日米軍再編とはすなわち日米の軍事一体化路線でもある。次期総理総裁に決まったも同然の安倍晋三氏は、自ら長州閥に連なることを公言するも同然で、恐らく明治維新後の琉球処分など、沖縄の近現代史をまともに勉強したこともないだろう。基地撤去を願う沖縄の世論をよそに、つまりは米国の言いなりになると、わたしは予測する(ちなみに安倍氏の近著に「美しい国へ」があるが、韓国では米国を「美国」と表記する)。そういう状況の中での「柵の設置」であり「閉鎖の可能性」だ。直接基地に向かってのシュプレヒコールはやらせない、とのある種の表現規制ではないだろうか。
 それにしても「不法投棄の防止が目的」との防衛施設局の説明はひどい。この問題は、県外にも広く知られるべきだと思う。
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by news-worker | 2006-09-03 20:19 | 平和・憲法~沖縄  

最低賃金

 この週末のニュースの一つに、地域別最低賃金の改定があった(共同通信)。
(引用開始)
最低賃金2-6円引き上げ 青森など4県は610円 [ 09月01日 16時29分 ] 共同通信
 2006年度の地域別最低賃金(時間額)は全都道府県で2-6円の引き上げとなったことが厚生労働省のまとめで1日、分かった。全都道府県での引き上げは2年連続。一部を除き10月1日から実施される。
 引き上げ幅は愛知が6円。栃木、東京、長野、静岡、広島など11都県が5円だった。青森、秋田、島根、高知、沖縄など9県は2円の引き上げにとどまった。
 最低賃金が最も高いのは東京の719円で、次いで神奈川の717円。最も低いのは青森、岩手、秋田、沖縄の610円。全国の加重平均額は前年度より5円アップの673円だった。
 都道府県は金額の高い順番にAからDまで4ランクに分けられている。厚労相の諮問機関、中央最低賃金審議会は7月、景気の回復状況に地域差があるとして、A、Bは4円、Cは3円、Dは2円の引き上げを目安として答申を出した。
(引用終わり)

 「全都道府県で2-6円の引き上げ」だが、それでも最高の東京都でも時給719円でしかない。1日7時間働いたとして5033円。月に23日間働いたとして11万5759円。フルタイムの正社員労働者並みの労働でも、この金額を上回っていれば合法ということになる。これがセーフティ・ネットとされている最低賃金の実情だ。
 実際には、こんなこと(東京新聞)が起きている。
(引用開始)
トヨタ関連23社違法雇用 法定賃金守らず
 トヨタ自動車(愛知県豊田市)の下請け企業二十三社が法定の最低賃金や時間外割増賃金を守らずに約二百人のベトナム人を雇用していたとして、豊田労働基準監督署から労働基準法などに基づいて是正勧告を含む強い指導を受けていたことが二日、分かった。ベトナム人はいずれも「技能実習生」として受け入れており、未払い賃金の総額は五千万円余りとみられる。
(中略)
 全国の労働局は労基法に基づいて地域や業種ごとに最低賃金を決めており、外国人の技能実習生にも適用される。愛知県の地域別最低賃金は一時間六百八十八円、産業別賃金は業種により金額が異なるが、地域別最低賃金より高め。時間外労働の賃金は二割五分増し。
 しかし、これらの企業は業種や就労実態を問わず一カ月十二万二千円の統一賃金を取り決めていた。時間外労働もほぼ常態化していたが、賃金の割り増しもしていなかった。ある企業の場合、産業別最低賃金は八百七円だが、統一賃金と労働実態から割り出した時間当たりの賃金は七百二円。時間外労働についても、少なくとも一時間千九円に対し、半分以下の四百五十円しか支払っていなかった。
(引用終わり)

 東京新聞の記事にも出てくるが、最低賃金にはもうひとつ産業別最低賃金もある。
 法律的、制度的な問題は別としても、産業別最低賃金の引き上げのためには、産業別労働組合に重要な役割と責任がある。経営者は黙っていても賃金を上げてくれない。労働者が要求し、交渉しなければ賃上げは実現できないし、賃金の底上げもできない。
 だから「この産業で働くなら、最低、これだけの賃金は保証されてしかるべきだ」という最低賃金の底上げを図るには、まず、その産業で働く労働者をすべて結集させることができる労働組合でなければならない。すべての労働者に横断する要求を取りまとめ、労働者が身を置く個々の企業にその最低賃金を守らせる交渉をしてこそ、産業別最低賃金も実効性を持つ。
 かつて、正社員雇用が当たり前だったころには、春闘で企業別の単組が連合した産別組合が企業側と集団交渉で賃上げ額を決める、という図式が多くの産業でみられた。しかし今日、非正規雇用が被雇用者全体の3分の1を占めるようになり、しかもその大半は労働組合に加入していない、既存の労働組合が受け入れない、という状況になっている。それでは産別組合は産別組合としての機能と責任を果せない。
 産業別最低賃金の底上げは、働く者の生活の向上はもちろんだが、その産業の発展にもつながるはずだ。労働組合は、まずは非正規雇用の人たちをはじめとして、労働組合への加入を進め、組織率を上げなければならない。そして、産業全体の賃金の底上げを図っていかなければならない。あらゆる産業の労働組合がその努力をすれば、社会全体としての最低賃金の底上げにつながる。それが、結局は既存の組合員の権利と労働条件を守るいちばん確実な方法でもあると思う。
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by news-worker | 2006-09-03 13:13 | 格差社会