カテゴリ:格差社会( 5 )

 

偽装請負の指導監督強化を厚労省が通知

 厚生労働省が4日、偽装請負に対する指導監督を強化するよう、都道府県に通知を出した(共同通信)。ホリエモンことライブドアの堀江貴文前社長の初公判があったり、凍結精子による体外受精で生まれた子どもをめぐる最高裁判決があったり、大きなニュースがあった中で、目立たないニューではあるが、重要なニュースだと思う。
(引用開始)
偽装請負の監督指導強化 厚労省、処分を厳格に [ 09月04日 20時05分 ] 共同通信
 厚生労働省は4日、労働者派遣法に違反する「偽装請負」について監督指導強化を指示する通知を各都道府県労働局長に出した。複数の会社で偽装請負を繰り返す悪質な業者に対し刑事告発や行政処分にするなど、厳格な対応を求めている。
 偽装請負は安全管理の責任の所在があいまいになるなどの弊害がある。このため、通知は重度の労災事故が起きた際、発注元の会社を労働安全衛生法違反で刑事処分すると同時に、請負業者に対して業務停止命令など行政処分をすることも求めている。
(引用終わり)

 厚生労働省の通知は、朝日新聞の偽装請負をめぐる一連の報道に突き動かされてのこと、と言っていいと思う。メディアが状況を伝えれば、行政が動かざるを得なくなる。状況が変わるかもしれないとの期待が出てくる。その一例だと思う。これが行政の単なるアリバイで終わってしまうかどうかも、実はメディアが今後、何を伝えるかで変わってくると思う。
[PR]

by news-worker | 2006-09-05 02:24 | 格差社会  

最低賃金

 この週末のニュースの一つに、地域別最低賃金の改定があった(共同通信)。
(引用開始)
最低賃金2-6円引き上げ 青森など4県は610円 [ 09月01日 16時29分 ] 共同通信
 2006年度の地域別最低賃金(時間額)は全都道府県で2-6円の引き上げとなったことが厚生労働省のまとめで1日、分かった。全都道府県での引き上げは2年連続。一部を除き10月1日から実施される。
 引き上げ幅は愛知が6円。栃木、東京、長野、静岡、広島など11都県が5円だった。青森、秋田、島根、高知、沖縄など9県は2円の引き上げにとどまった。
 最低賃金が最も高いのは東京の719円で、次いで神奈川の717円。最も低いのは青森、岩手、秋田、沖縄の610円。全国の加重平均額は前年度より5円アップの673円だった。
 都道府県は金額の高い順番にAからDまで4ランクに分けられている。厚労相の諮問機関、中央最低賃金審議会は7月、景気の回復状況に地域差があるとして、A、Bは4円、Cは3円、Dは2円の引き上げを目安として答申を出した。
(引用終わり)

 「全都道府県で2-6円の引き上げ」だが、それでも最高の東京都でも時給719円でしかない。1日7時間働いたとして5033円。月に23日間働いたとして11万5759円。フルタイムの正社員労働者並みの労働でも、この金額を上回っていれば合法ということになる。これがセーフティ・ネットとされている最低賃金の実情だ。
 実際には、こんなこと(東京新聞)が起きている。
(引用開始)
トヨタ関連23社違法雇用 法定賃金守らず
 トヨタ自動車(愛知県豊田市)の下請け企業二十三社が法定の最低賃金や時間外割増賃金を守らずに約二百人のベトナム人を雇用していたとして、豊田労働基準監督署から労働基準法などに基づいて是正勧告を含む強い指導を受けていたことが二日、分かった。ベトナム人はいずれも「技能実習生」として受け入れており、未払い賃金の総額は五千万円余りとみられる。
(中略)
 全国の労働局は労基法に基づいて地域や業種ごとに最低賃金を決めており、外国人の技能実習生にも適用される。愛知県の地域別最低賃金は一時間六百八十八円、産業別賃金は業種により金額が異なるが、地域別最低賃金より高め。時間外労働の賃金は二割五分増し。
 しかし、これらの企業は業種や就労実態を問わず一カ月十二万二千円の統一賃金を取り決めていた。時間外労働もほぼ常態化していたが、賃金の割り増しもしていなかった。ある企業の場合、産業別最低賃金は八百七円だが、統一賃金と労働実態から割り出した時間当たりの賃金は七百二円。時間外労働についても、少なくとも一時間千九円に対し、半分以下の四百五十円しか支払っていなかった。
(引用終わり)

 東京新聞の記事にも出てくるが、最低賃金にはもうひとつ産業別最低賃金もある。
 法律的、制度的な問題は別としても、産業別最低賃金の引き上げのためには、産業別労働組合に重要な役割と責任がある。経営者は黙っていても賃金を上げてくれない。労働者が要求し、交渉しなければ賃上げは実現できないし、賃金の底上げもできない。
 だから「この産業で働くなら、最低、これだけの賃金は保証されてしかるべきだ」という最低賃金の底上げを図るには、まず、その産業で働く労働者をすべて結集させることができる労働組合でなければならない。すべての労働者に横断する要求を取りまとめ、労働者が身を置く個々の企業にその最低賃金を守らせる交渉をしてこそ、産業別最低賃金も実効性を持つ。
 かつて、正社員雇用が当たり前だったころには、春闘で企業別の単組が連合した産別組合が企業側と集団交渉で賃上げ額を決める、という図式が多くの産業でみられた。しかし今日、非正規雇用が被雇用者全体の3分の1を占めるようになり、しかもその大半は労働組合に加入していない、既存の労働組合が受け入れない、という状況になっている。それでは産別組合は産別組合としての機能と責任を果せない。
 産業別最低賃金の底上げは、働く者の生活の向上はもちろんだが、その産業の発展にもつながるはずだ。労働組合は、まずは非正規雇用の人たちをはじめとして、労働組合への加入を進め、組織率を上げなければならない。そして、産業全体の賃金の底上げを図っていかなければならない。あらゆる産業の労働組合がその努力をすれば、社会全体としての最低賃金の底上げにつながる。それが、結局は既存の組合員の権利と労働条件を守るいちばん確実な方法でもあると思う。
[PR]

by news-worker | 2006-09-03 13:13 | 格差社会  

「偽装請負」報道に対し電機連合は「『違法行為はなかった』ことが確認されている」とコメント

 以前のエントリーでも少し触れたが、朝日新聞が製造業の「偽装請負」を継続的に取り上げ、雇用の側面から格差社会の実相に切り込む報道を続けている。で、この朝日の報道を明らかに意識したと思われるコメントを、電気電気機器産業の産別組合である電機連合が8月7日に委員長名で発表していた。書き出しは「 一部新聞において『製造業における偽装請負』に関する報道がなされましたが、『違法行為はなかった』ことが確認されています」。まるで経営側のコメントではないか。
 このコメントに対して、水口洋介弁護士がご自身のブログで見解を表明しておられるのを知った。共感するところが多いのでご紹介する。

追記 8月18日午前5時
 「偽装請負」はマスコミ産業にも見られ、決して他人事ではない。そうした労働者の権利の侵害、あるいは抑圧の上に、正社員労働者の待遇があることを、正社員労働者は自覚しなければならない。
[PR]

by news-worker | 2006-08-17 23:56 | 格差社会  

〝派遣社員差別訴訟〟が最高裁へ

 派遣社員の一方的な使い捨てを許さないために、真正面から司法の場で争っている「一橋出版=マイスタッフ争議」の加藤園子さんのことは、以前のエントリーで紹介した。きのう(1日)はわたしが議長を務める支援共闘会議の定例会合が開かれた。
 一審の東京地裁、二審の東京高裁とも、争点についてはことごとく会社主張を採用した不当判決に終わったが、7月に、最高裁に上告受理申し立ての手続きを取った。弁護団の分析では、1年以内に上告受理申し立てが却下されなければ、十分にたたかう時間が確保できる。
 NHKの特集「ワーキング・プア」が大きな反響を呼び、朝日新聞が「偽装請負」の実態を連続して報じたことで、あらためて雇用・労働面の格差に社会的関心が高まっていることを感じる。そんな中で、最高裁へと進んだ加藤さんの争議が持つ意味は大きい。
 実は、派遣社員の雇い止めを真正面から司法で争っているケースは、加藤さんのほかにはあと1件あるだけだ。愛媛県の地方銀行「伊予銀行」と関連会社の「伊予銀スタッフ」という派遣会社を舞台にした訴訟だ。こちらは、原告の方が一人でがんばってきたのでこれまで労働争議という位置づけではなかったようだ。やはり松山地裁、高松高裁で敗訴しており、加藤さんと前後して最高裁に進んだ。代理人同士で連絡を取り合い始めており、今後は2つの事件の当事者が連携していく方針を共闘会議でも確認した。
 全国でもたった2例しかない〝派遣社員差別訴訟〟がほぼ同時に最高裁に進んだことを社会にもアピールしようと、10月20日11月1日に東京で大規模集会を開催することも決めた。最高裁に対しては、署名活動を強化して、おざなりの判断を示すことがないよう迫って行く。現在、裁判官の中には司法本来の責任を忘れたかのように、証拠を無視して現状を追認する態度に終始するひどいケースも決して珍しくはないことを、この2年間、実体験として知った。そうした司法に是正を迫りうるのは世論の力しかない。

 先日の朝日の記事に併用された図表の中では、「雇用安定度」が「正社員」は「高」、「偽装請負」が「低」に対し「派遣社員」は「中」となっていたが、これは誤解を招きかねないと思う。「中」と「低」は程度の差の問題であって、正社員との比較で言えば、ともに差別的待遇であることに変わりはない。朝日の記事は読み方を間違えると、「偽装請負」を是正してきちんとした「派遣社員」にすべきだ、という風に感じてしまうが、「派遣社員」もまた差別的雇用形態であることに変わりはない。

 カテゴリーに「格差社会」を新設した。単なる経済情勢の問題ではない。ワーキング・プアのように、将来に展望が持てない層の増大は社会不安を生む。世の為政者はそうした場合、外交上の敵を作り出し、社会の不満のエネルギーをそちらに誘導する。そうやって戦争が始まることは、過去の歴史が証明している。「格差社会」は「平和」の問題と表裏一体だ。

追記 8月2日午後
 「10月20日」と記載した集会は、会場の都合で「11月1日」に変わった。関係カ所を修正します。

追記 8月3日未明
 加藤園子さんの争議を紹介した6月30日のエントリーで、事実関係が不正確な記述2カ所を訂正した。
 「派遣労働をめぐる争議で敗訴~司法は現状追認しかできないのか」
 
[PR]

by news-worker | 2006-08-02 07:11 | 格差社会  

派遣労働をめぐる争議で敗訴~司法は現状追認しかできないのか

 この2年間、支援にかかわってきた派遣労働をめぐる争議の民事訴訟で昨日(29日)、東京高裁の判決があり、一審の東京地裁に続いて原告側の敗訴となった。全国的にみても先駆的なケースなのだが、一、二審連敗ではニュースになるわけもなく一行も報じられていないが、雇用と労働の現場で実際に何が進行しているか、その実態に虚心に向き合おうとしない司法には怒りを覚える。
 原告は加藤園子さん。被告は教科書出版社である「一橋出版」(東京都杉並区)と人材派遣会社「マイスタッフ」(同)。裁判で求めているのは、加藤さんを一橋出版の教科書編集の現場に戻すことだ。争議は出版労連が中心になって取り組み、わたしが支援共闘会議の議長を務めている。
 加藤さんはマイスタッフから一橋出版に派遣され、高校の家庭科教科書と副教材の作成を2年間にわたって一人で担当。教科書が検定を通過した後の03年5月、本人に雇用継続の意思があったにもかかわらず、一橋出版から雇い止めが通告された。これだけなら「どこがおかしいの」と思われるかもしれない。しかし、加藤さんが経験したことの一つひとつが、実は「派遣」を隠れ蓑として、一橋出版が違法な労働者使い捨て策をとっていたことを示している。

続きを読む
[PR]

by news-worker | 2006-06-30 10:05 | 格差社会