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もはや戦前ではないか

 ことしは「戦後60年」だった。わたしは1960年の生まれだから、日本の敗戦から15年後に生まれたことになる。子どものころを思い返せば、もの心がついたころには家にテレビがあり、小学校のころには、我が家にはなかったけれども大抵の家には自家用車もあり、飢えた経験もなかった。1970年は大阪万博が今も強烈に印象に残る。「70年安保」や「よど号ハイジャック事件」があって、世相も恐らくは激動していたのだろうが、「高度成長」に首までどっぷりつかっていた子どもたちには、漠然と「世の中は明るい」という気持ちしかなかったように思う。中学、高校と進んでも、自分の未来と「さて何になろうか」と自分の可能性を信じることができていた。ちなみに大学受験では、その後の「センター試験」となる「共通一次試験」の第一期生となった。
 長じてこの20数年間は、新聞記者という職に就いてきた。この1年間は、初めてその立場を離れた1年だった。所属メディア組織からも少し距離を置き、労働組合専従役員という運動者の視点で日本の社会と向き合ったとき、痛切に感じるのは「もはや戦前ではないか」ということだ。

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by news-worker | 2005-12-31 11:29 | 身辺雑事  

被害者の実名、匿名(その3)

 国の犯罪被害者被害者等基本計画が12月27日に閣議決定された。事件事故の被害者を実名で発表するか、匿名で発表するかは警察の判断に委ねる、との項目はそのまま維持された。日本新聞協会と日本民間放送連盟は同日、共同声明を発表した(全文は新聞協会のホームページに掲載)。

(引用開始)
 犯罪被害者等基本法の施行を受けた犯罪被害者等基本計画が27日、策定された。わが国では、これまで犯罪被害者の権利が顧みられることは少なく、十分な支援も受けてこられなかった。この基本計画は、遅まきながら、犯罪被害者のための総合的施策のスタート台となるもので、私たちも評価する。
 ただ、その中で、被害者名の発表を実名でするか匿名でするかを警察が判断するとしている項目については、容認できない。匿名発表では、被害者やその周辺取材が困難になり、警察に都合の悪いことが隠される恐れもある。私たちは、正確で客観的な取材、検証、報道で、国民の知る権利に応えるという使命を果たすため、被害者の発表は実名でなければならないと考える。
 実名発表はただちに実名報道を意味しない。私たちは、被害者への配慮を優先に実名報道か匿名報道かを自律的に判断し、その結果生じる責任は正面から引き受ける。これまでもそう努めてきたし、今後も最大限の努力をしたいと考えている。私たちはこれまで、この被害者名発表に関する項目に異議を唱えて改善を求めてきたが、それは、被害者対策と国民の知る権利という、いずれも大切な公益をいたずらに対立させるのではなく、調和させる道があると信じたからである。私たちの再三の求めが容(い)れられなかったのは極めて残念で、ここに改めて遺憾の意を表明する。
 基本計画の策定にあたった内閣府の犯罪被害者等基本計画検討会で、この項目への私たちの危惧(ぐ)に対し、警察側構成員は「従来の私どもの考え方を何ら変更するものではない」と答えている。計画にこの項目が盛り込まれたとしても匿名発表が現在以上に増えることはない。そう確約したものと、私たちは受け止める。警察現場で、この項目が恣(し)意的に運用されることのないよう、私たちは国民とともに厳しく監視したい。

(引用終わり)

 今回の一件は「マスメディアよりも警察の方が信用できる」という当事者の声の方が、「ちゃんと判断するからわれわれに任せてほしい」と主張しているマスメディア側の声よりも世論の支持を得た、ということではないかと、わたしは考えている。少なくとも政府は世論の風向きをそう判断した、ということだと思う。
 このブログでも何回か書いてきた(ココココ)が、わたしは警察の発表は実名を原則とすべきだと考えている(なぜそう思うかは繰り返さない)。しかし、現に報道による被害はなくなっていない。「われわれに任せてほしい」と言うならば、報道被害を未然に防止し、真に権力の監視機能を果たしていく具体的な道筋をも、社会に提示しなければならない。それが今のメディアの側にできていないと思う。
 なぜ、できていないか。理由の一つは、責任の所在があいまいなことにある。思い切った記者クラブ改革ができないことと共通している。いわゆる「メディアスクラム」の防止についても、近年は「節度ある取材の申し合わせ」が各地の報道各社の責任者(全国紙の支局長や地元紙の編集局長ら)間で行われているが、各社の自由な取材と報道は担保されないといけないから、取材制限の強制はできない。互いの良識に期待する紳士協定どまりだ。ペナルティはせいぜい、記者クラブへの出入り禁止ぐらいであり、しかもそれはメディア同士の業界内的な効力でしかない。記者クラブに加盟していない雑誌やフリーランスだって存在している。いくら報道各社が申し合わせをしても、いくら個々の新聞社、放送局が改革に努めたとしても、各社の集合体としての一般用語としての「メディア」となると、とたんに責任が拡散してしまう。
 困難な課題であることは間違いないが、克服しなければならない課題だ。記者クラブ改革に通じる課題でもある。メディアの内部にいる人の間では、実は問題意識は相当に広まっていると感じている。その問題意識をネットワーク化して、具体的な改善策の提示に結び付けることができないかと考えている。
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by news-worker | 2005-12-30 17:36 | メディア  

全下野労組争議、1月中に地裁が判断

 少し日が経ってしまったが、26日は宇都宮に出張。全下野新聞労働組合が印刷部門別会社化・社員転籍計画の差し止めを求めて宇都宮地裁に申請している仮処分裁判の第3回審尋手続きを傍聴した。審尋そのものは、組合と下野新聞社の双方の主張が出揃ったことを確認して、10分足らずで終了。来年1月中に、地裁の判断が示されることになった。年末年始の休みに入り、全下野労組の争議もいったん休戦となった。
 この争議では、新聞労連を責任団体にして、地元労組にも参加してもらい支援共闘会議を11月末に結成。裁判闘争支援として、宇都宮地裁裁判官あての団体署名運動に取り組んだ。26日に第一次集計分として1148通を提出。最終的には1300通くらいになりそうだ。新聞労連はナショナルセンターの連合、全労連のいずれにも加盟していない中立系の産別組合だが、団体署名では連合、全労連にも理解と協力を要請し、それぞれの加盟組織に新聞労連から署名用紙を送らせてもらった。地元・栃木では、連合栃木や自治労栃木県本部に多大な協力をいただいた。
 内心では「せめて500通」と思っていただけに、予想をはるかに超える署名は本当に嬉しい。署名を寄せていただいた全国の労働組合の皆さん、本当にありがとうございます。
 年が明けて地裁の判断が出れば、どのような内容であれ(組合が勝っても負けても)、争議は新たな段階に進む。それで終わりではない。下野新聞社が計画を撤回し全下野労組が勝つまで、新聞労連の支援も緩めるわけにはいかない。
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by news-worker | 2005-12-29 23:55 | 全下野新聞労組の闘争  

日々の働き方など

 春闘方針案も何とか書き上げ、この週末はカレンダー通りの3連休で、久々にまとまった休み。だが、自宅に持ち帰りの仕事がいくつかある。職場の長時間労働も問題だが、長時間〝労働運動〟ではシャレにもならない。
 新聞労連委員長の日常の働きぶりを少しご紹介すると、そもそも委員長の勤務規定はあるのかないのかよく分からない。書記局(=事務所)の営業時間の目安は午前10時-午後6時だが、午後8時までは書記さん(事務局員)が毎日交代で1人、夜勤で残っている。けっこう夜になっても、加盟組合から相談事や資料提供の依頼などがあるからだ。
 書記さんたちには休日管理もちゃんとやってもらい、土日出勤の場合は平日に代休をとってもらっているが、委員長は基本的に完全な「裁量労働」。朝は書記さんたちよりも少し遅めの出勤で勘弁してもらっているが、夜は会議があれば、その後の「軽く一杯」も含めて、しばしば終電での帰宅となる。労組専従でもなければ、労働組合の会議は仕事が終わった後ということになるから、どうしても夜が多い。
 土日も会議や集会があれば出勤。本当は平日に休みを取りたいのだが、平日は平日で何やかやと予定が入り、ほとんど休めない。出張も多く、ざっと年間100日は東京を離れている。
 仕事は増やそうと思えばいくらでも増えてしまう。他産業の労組からも原稿を頼まれたり、学習会の講師を頼まれたりする。そうしたことも新聞労連委員長の職責と考えているので、日程が合う限りは受けるようにしている。
 よく「忙しくて大変でしょう」と同情されるが、それほど「きつい」とは感じていない。職場にいるときは、どうかすると週に1回は泊まり勤務(せいぜい仮眠2時間)が回ってきたし、自分の担当分野が忙しくなると、会社の近くのホテルに泊まったりしていた。今は、出張の時を除けば家に帰れる。新聞の仕事は深夜勤務がもともと宿命なのだが、やはり朝、家を出て夜は家に帰るのが人間の働き方の基本だと思う。
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by news-worker | 2005-12-23 21:02 | 身辺雑事  

特殊指定改廃に反対する新聞労連声明

 新聞の値段は雑誌や書籍、レコード・CDとともに、数少ない「定価」だ。同じ題号の新聞なら、全国どこでも発行本社が指定する同じ値段で戸別配達される。例外は、教材用に学校がまとめ買いする場合などに限られる。独占禁止法の例外として再販制度が適用されているからだ。
 独禁法は商品の価格をメーカーや問屋が指定し拘束することを禁止している。小売店にとっては、価格は他店との重要な競争手段だからだ(ちなみに「そうは問屋が卸さない」という言い回しは、言うことを聞かない小売店に問屋が商品を回さず、干し上げて屈服させることが由来。こうした行為も独禁法違反)。新聞はそういう特殊な商品だから、独禁法が禁止する「不公正な取引方法」も個別に規定されている。これが「特殊指定」と呼ばれる取り決めだ。
 公取委は11月に、その特殊指定の見直しを表明した。再販制度は存続させるとしているが、s特殊指定と再販は一体で運用されており、仮に特殊指定が改廃されると、新聞販売店の経営は崩壊し、発行本社の収入バランスが崩れ、ひいては紙面が荒れることになる。その辺のことは以前にも書いた(ココ)ので繰り返さないが、必ずそうなる。
 公取委の方針表明から間があいてしまったが、先週の新聞労連中執委で特殊指定改廃に反対する声明を取りまとめ公表した。新聞を守るには、読者の理解と支持が不可欠と思う。
 公取委の狙いについては「今だけ委員長さん」のブログ「新聞業界ってオモシロイ!?」の分析が、新聞販売の現場に身を置く方だけに鋭い。ご一読を。
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by news-worker | 2005-12-20 18:45 | メディア  

西村議員の再逮捕の意味

 西村真悟・衆院議員が組織犯罪処罰法違反容疑で大阪地検特捜部に再逮捕されたことを、19日付けの朝刊各紙が伝えている。容疑の中身は「犯罪収益収受」。つまり非弁活動(弁護士資格を持たない者が、弁護士にしかできない業務をすること)で違法に得た利益の分け前を受け取っていたということだ。各紙とも「国会議員に初めて適用」「弁護士に初めて適用」と伝えてはいるが、「初適用」の意味にはほとんど触れていない。(例えば共同通信
 実は、今回の再逮捕には深刻な意味がある。ヤメ蚊さんのブログ「情報流通促進計画byヤメ記者弁護士」で知ったので、詳しくはヤメ蚊さんのエントリーをお読みいただきたい(ココココ)。弁護士は刑事弁護では、無罪事件はともかくとして犯罪者から弁護士報酬を受け取る。その報酬の出どころは、犯罪行為であることが疑われる。もし、検察、警察がちゃんとした弁護をされたら困ると思ったら、この組織犯罪処罰法をちらつかせればいい、ということになる。
 もちろん、正常の弁護活動と弁護士活動を丸投げしていた西村議員とは比べるべくもない。しかし、検察、警察にとっては弁護士を揺さぶることが可能になる。それだけで効果はある。「弁護士に初適用」にはそういう意味があるのだが、新聞は書かない。
 そもそも組織犯罪処罰法は、ヤクザやマフィアに代表されるように、統制された組織犯罪に適用されるはずではなかったか。なぜ、西村議員に適用なのか、の「なぜ」を追っていけば、もっと書き方が変わってくるはずだ。特捜検事たち、検察幹部たちはいやな顔をするだろうが、それが新聞の「権力の監視」機能だ。
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by news-worker | 2005-12-19 10:16 | メディア  

管理職が全下野労組に復帰

 たびたびこのブログでも報告してきた栃木県の地方紙「下野新聞」の全下野新聞労働組合が闘っている「印刷部門別会社化・社員転籍」反対闘争で、同労組から画期的な知らせが届いた。管理職(部長代理級)就任に伴い、社内慣行によって組合を脱退していた前委員長が、組合に再加入した。同労組によると、社内から民主的な雰囲気がなくなりつつあることに危機感を抱いてのことだという(詳しくは全下野労組のブログ「闘争日記!」へ)。
 「管理職になったら労組脱退」は世間一般で半ば常識のように思われているけれども、何ら根拠はない。ただ、労使間の慣行というだけ。労働組合法上も組合員資格に疑義が生じるのは、経営側の利益を代表する立場にある人だけだ。平均的な新聞社の組織で言えば、組合員資格がないのは役員かせいぜい局長、局次長までではないだろうか。部長だって人事考課はするけれども、最終の考課権限はさらにその上の局長、役員クラスが握っている。つまり会社の使用人であって、経営意思を体現する立場ではない。
 全下野労組の前委員長の決断は、企業人として異例のことであることは間違いがない。本当に敬意を表したい。わたしの身近でも、管理職になった途端に「人が変わったのではないか」と思うほどに豹変してしまう人を、嫌というほど見てきた。そういう人に限って、酒の場では「最近は組合もダメになったな」などと言う。しかし、職制として発言できる機会があっても黙っているか、キレイごとを言っているかのどちらかが圧倒的に多い。管理職になっても良心から発言し、行動する人は残念ながら極めてわずかだ。
 世の管理職の皆さん。会社に身も心も捧げて、良心をごまかしながら働くのはやめましょう。「おかしい」と思ったら「おかしい」と声を上げる、その自由を保障するのが労働組合だ。現場から声が出なくなったら、その組織は多分、根腐れている。地域の言論を守ろうとする後輩たちに呼応して、声を上げようと決断した前委員長のような方がいらっしゃる限り、まだまだ大丈夫だと思う。
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by news-worker | 2005-12-17 01:56 | 全下野新聞労組の闘争  

「『格差社会』は許さない」

 12日から15日まで、春闘準備の会議の連続。夕べは泊り込みだった。さすがに疲れた。
 新聞労連の春闘方針の基調は「『格差社会』は許さない」とすることになった。明日からは方針案作成の追い込みで、当分は慌しい日々が続きそう。
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by news-worker | 2005-12-16 00:01 | 身辺雑事  

てびちの“ステーキ”

 9-11日は沖縄に出張。色々書き残しておきたいことが多いのだが、今週いっぱい、春闘に備えた会議の連続となり、その準備もあって時間がない。ひと段落したところであらためて書きたい。
 
 そういうわけで、今回は「食」の報告だけ。
 沖縄にはおいしい食べ物がたくさんある。わたしのお気に入りは「てびち」。豚の足、トンソクだ。おでんに入れたり、煮込んだりが一般的な食べ方だが、地元紙労組の方に、地元でも珍しい「焼きてびち」の店に案内してもらった。博多あたりでポピュラーな炭火での炙り焼きを想像していたのだが、出てきた皿を見て驚いた。ひと言で言うなら「てびちのステーキ」。柔らかく(多分、煮込んで)下ごしらえをしたトンソクを魚の開きのように開き、フライパンでじっくりと焼くらしい。皮には茶色の焦げ目がきれいについてバリッとした食感。しかし、中はふんわりでコラーゲンがトロトロ。2本分、3本分を並べて焼くと、見た目は写真の通り、一枚の大きなホットケーキのようになる。何というか、感動、感激の食体験だった。
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 那覇市栄町の「東大」という店。店名の由来はよく分からない。観光客向けの店構えではないから、だれかに教えてもらわないと多分、分からない。地元では最近、人気急上昇だという。焼き上がるのに時間がかかるが、その間はおでんと泡盛で待つ。おでんのてびちもフワフワでおいしかった。
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 帰京前の昼食は、やはり地元紙労組の人に連れて行ってもらった沖縄そばの店で。波上神社近くの「シーサー」という店。スープはかつお節の風味は控えめでマイルド。添加物を一切使わないというだけあって、薬味も一般的な紅しょうがではなく、ふつうの生しょうがを刻んだものだった。大盛りを頼んだが、スープも全部飲み干した。
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by news-worker | 2005-12-11 20:50 | 食日記  

自衛隊のイラク派遣が延長

 イラクへの自衛隊派遣の1年延長が8日の臨時閣議で決まった。大義なき気戦争だったことが明白になって久しいイラク戦争への支持も撤回せず、小泉首相の記者会見は、相も変わらずで説明責任を果たしていない。8日夜に、「派遣延長決定に抗議し、自衛隊の即時撤退を求める」との趣旨の新聞労連委員長の声明を発表した。一両日中に新聞労連HPにアップします。
 今日から沖縄に2泊3日で出張。在日米軍の再編で渦巻く現場の憤怒に触れて来たい。

追記(12月11日)
 上記の委員長声明が新聞労連ホームページにアップされた。こちらへ。
 
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by news-worker | 2005-12-09 06:10 | 平和・憲法