<   2006年 01月 ( 27 )   > この月の画像一覧

 

ネット時代の誘拐報道協定

 仙台市の乳児連れ去り事件は、乳児が8日に無事保護されて解決した。当初は公開捜査だったが、身代金要求を受けて宮城県警が報道各社に協定締結を申し入れる異例の展開だった。8日の朝刊各紙もこの経緯に触れ、報道を自粛していたとの社告も掲載している。
 中でも朝日新聞は総合面の「時時刻刻」で「報道自粛 ネット注目」との主見出しで特集記事を掲載(東京本社発行最終版)。朝日のサイトに記事本文はアップされていないので、あらましを紹介すると「第一報後異例の協定」「沈黙は不自然?各社悩む」「『身代金か』書き込み続々」として、①事件発生を伝える第一報の報道後に報道自粛協定が結ばれたのは過去にグリコ森永事件があるぐらいで極めて異例②続報が一切なくなるのはかえって不自然であるとして、民放各社のニュース番組と地元紙は第一報の範囲内で続報を報道したが、NHKと全国紙は乳児保護まで一切の報道を控えた③新聞社サイトに続報が掲載されなくなったことから、ネット上の掲示板には「報道協定中だろう」などの書き込みが相次いだ-と紹介している。
 

続きを読む
[PR]

by news-worker | 2006-01-09 14:38 | メディア  

航空労組連絡会の皆さんに教わること

 8日は航空関係労組の懇談会、言ってみれば労働組合同士の新年会に出席した。航空産業では、最大手の日本航空の分裂労務政策が山崎豊子さんの小説「沈まぬ太陽」などで知られているが、労働組合運動は2つの潮流に分かれている。会社の経営方針に同調する組合と、そうではない組合だ。後者は「航空労組連絡会(航空連)」(HP)をつくっている。懇談会は、その航空連関係の集まりだった。新聞労連は航空連とここ数年来、憲法改悪反対や有事法制反対の運動で共闘している。
 ちなみに、「会社の経営方針に同調する組合」は「航空連合」(HP)をつくっているのだが、そう決め付け風に言うと、航空連合からは怒られるかもしれない。航空連合に参加している労働組合の方とは面識がないので、正直、「会社の経営方針に同調」と言ってしまっていいのかどうか分からないところもあるが、航空連合と航空連のそれぞれのホームページをご覧いただくと、労働組合あるいは労働運動に対する両者のスタンスの違いがよく分かると思う。

続きを読む
[PR]

by news-worker | 2006-01-09 01:14 | 労働組合  

憲法9条と21条

 少し遅めだが、昨日6日から新年の仕事を開始。この日は「共謀罪」と「憲法改正」をめぐる新聞労連の運動方針について、他産業の労組の機関紙など外部からの取材を2件受けた。
 両テーマとも、わたしは憲法21条の「言論・表現の自由」「知る権利」と密接に絡んだ問題としてとらえている。新聞労連の06春闘方針案にも重点項目として盛り込んでいる。ひと言で言うなら、「戦争で最初に犠牲になるのは真実」という言葉がある通り、戦争国家体制は必ず言論・表現の自由がおかしくなる、だから新聞労働者は「言論・表現の自由」「知る権利」を守ることを通じて、平和と民主主義を守っていこう、ということだ。社会には地域、職域ごとに「九条の会」が立ち上がっている。「マスコミ九条の会」というのもあるが、わたしは加入していない。わたしが全力を傾注すべきは労働組合であり、新聞労働者は「9条」の前に「21条」だと思っている。「21条」を通じて「9条」を考えていく、ということでもいい。その運動をつくり上げた上で、各地の「九条の会」と連帯できればいいな、と思う。
 春闘方針案を議題とする新聞労連の臨時大会を2月1-2日に予定している。臨時大会を経て春闘も本格化する。賃上げ・経済闘争では、今年はここ数年とは違い産業界に「ベア復活」の兆しもあるが、新聞産業はどうだろうか。決して楽観はできない。
[PR]

by news-worker | 2006-01-07 09:30 | 平和・憲法  

書評「働きすぎの時代」

 
c0070855_11392492.jpg今だけ委員長さん「初売りで賑わう商店街で… 運ぶ手間=300円」のエントリーで、郵政公社とヤマト急便が、福袋の発送を1個300円で請け負うのを見て「これまでは、消費者ニーズがあるから仕事が生まれてきたのでしょうが、いまは『仕事を得るため』にこれまでの生活習慣すらもぶち壊す方向へ向かっているように感じます。自分で買った物を運ばせる―日本人ってそんなに裕福な生活習慣が備わってしまったのでしょうか。」と感想を書かれている。わたしも同感。少し前に読んだのだが、森岡孝二・関西大教授の「働きすぎの時代」(岩波新書)を思い出した。
 労働時間は世界的にみても1980年代以降、増加に転じている。森岡教授は今や世界は新たな「働きすぎの時代」に入っていると指摘し、その原因、背景として現代の高度資本主義の4つの特徴を挙げている。ひとつはグローバリゼーションによるリストラと産業再編、2つ目は情報通信技術の発達、つまりIT化、3つ目が大衆消費社会、4つ目が森岡教授は「フリーター資本主義」と名づけているが、雇用面の規制緩和と労働市場の流動化による非正規労働の増大と、それがもたらした正社員の長時間労働化だ。
 冒頭の郵政公社と黒ネコヤマトに話を戻すと、これは3点目の「大衆消費社会」そのもの。森岡教授は「コンビニや宅配便に象徴される、利便性を追求するサービス経済の発展は、情報化の進展とあいまって消費者の需要構造を変化させ、経済活動の24時間化をもたらし、働きすぎの新しい要因をつくりだしている」と指摘する。
 これもまた、小泉首相が声高に叫ぶ「改革」の果てのわたしたちの社会だ。企業は利益を求めて走り続けるしかない、足を止めたら負け。新しい「仕事」も創り出す。それが「ビジネス・チャンス」。でも、そこで働いている人間はどうなるだろうか。労働組合も現状をすべて受け入れてしまったら、労働者の健康はだれが守るのだろうか。「過労死」は自己責任になりかねない。実際のところ裁量労働、あるいはホワイトカラー・エグザンプションはそうした制度だ。

 新聞産業ではとりわけ編集部門、記者の世界に、伝統的に長時間労働がある。政治部や社会部では、担当によっては月間の超過勤務時間が恒常的に200時間を超えるなど、常軌を逸していると言っていい。記者の働き方の問題は、権力寄りと指摘される新聞ジャーナリズムの問題の本質にも深くかかわっていると思うのだが、なかなか改善されない。社会経済の構造的な変化ばかりではなく、「新聞記者とはそういうものだ」という職業意識もある。
 こうした「自己実現のための働きすぎ」に対しても、森岡教授は解答を用意している。それは雇用者、管理職が強権を発動して働かせないようにすることだ。つまり、労働基準法その他のルールを会社に守らせることだ。
 どこの新聞社も人員増は容易には認めない。会社はホンネでは、まず社員の一人ひとりを目一杯働かせようとする。編集の職場で言えば「記者魂を逆手に取られている」のが現状だと思う。しかし、新聞産業もIT化が進み、インターネット展開で24時間化が進んでいる。生身の人間の働き方としては、限界を超えているというのが実感だ。一人ひとりの働きが足りないのではなくて、記者の人数が足りないのだ。あるいは、仕事を増やしすぎてしまい、人間が追いつけなくなっている。せこい人件費抑制を許してはならない。簡単な話だが「健康でなくてはいい記事は書けない」はずだ。
[PR]

by news-worker | 2006-01-05 11:43 | 読書  

「格差社会」報道

 ネットで見る限りだが、ここ数日の新聞各紙には「格差社会」に焦点を当てた報道が目に付く。中でも毎日新聞が年内から連載を始めた「縦並び社会」第1部「格差の現場から」は力作。最新回は「患者になれない」。国民健康保険料を支払えず、従って体調が悪くても病院に行かずに我慢し、どうにも激痛を我慢できなくなり、病院に行ってがんと判明したケースを紹介している。このほか、派遣労働や偽装請負といった雇用面にも切り込んでいる。
 国保滞納の結果、何が起きているかは、年末に共同通信も出稿しており、「国民健康保険(国保)の保険料を滞納して保険証を返還し、医療機関の受診の遅れから病状が悪化、死亡したとみられる患者が過去六年に少なくとも十一人いたことが」分かったとしている。(北海道新聞サイト=1月15日リンク切れ確認)
 3日付けの朝日新聞朝刊には「公立の小中学校で文房具代や給食費、修学旅行費などの援助を受ける児童・生徒の数が04年度までの4年間に4割近くも増え、受給率が4割を超える自治体もある」ことが分かった、との記事が掲載されている。
 このほかにも〝貧困化〟のバロメーターとなる指標は、貯蓄ゼロ世帯の急増とかいろいろある。勤労収入による可処分所得が生活保護の支給水準を下回る「ワーキング・プア」も増えている。それが、「改革」の果てにたどりついたわたしたちの社会だ。この社会で憲法が〝改正〟されようとしていることは、何を意味するのか。そこまで見とおした報道を期待したい。

追記(1月15日) リンク切れに備え上記朝日新聞記事を引用する

就学援助4年で4割増 給食費など東京・大阪4人に1人
2006年01月03日17時09分

 公立の小中学校で文房具代や給食費、修学旅行費などの援助を受ける児童・生徒の数が04年度までの4年間に4割近くも増え、受給率が4割を超える自治体もあることが朝日新聞の調べで分かった。東京や大阪では4人に1人、全国平均でも1割強に上る。経済的な理由で子どもの学習環境が整いにくい家庭が増え、地域的な偏りも目立っている。

 文部科学省によると、就学援助の受給者は04年度が全国で約133万7000人。00年度より約37%増えた。受給率の全国平均は12.8%。

 都道府県で最も高いのは大阪府の27.9%で、東京都の24.8%、山口県の23.2%と続く。市区町村別では東京都足立区が突出しており、93年度は15.8%だったのが、00年度に30%台に上昇、04年度には42.5%に達した。

 背景にはリストラや給与水準の低下がある。厚生労働省の調査では、常用雇用者の給与は04年まで4年連続で減り、00年の94%まで落ちた。

 給付の基準は自治体によって異なり、足立区の場合、対象となるのは前年の所得が生活保護水準の1.1倍以内の家庭。支給額は年平均で小学生が7万円、中学生が12万円。修学旅行費や給食費は、保護者が目的外に使ってしまうのを防ぐため、校長管理の口座に直接、振り込んでいる。

 同区内には受給率が7割に達した小学校もある。この学校で6年生を担任する男性教員は、鉛筆の束と消しゴム、白紙の紙を持参して授業を始める。クラスに数人いるノートや鉛筆を持って来ない児童に渡すためだ。

 卒業文集を制作するため、クラスの児童に「将来の夢」を作文させようとしたが、3分の1の子が何も書けなかった。「自分が成長してどんな大人になりたいのか、イメージできない」のだという。

 同区の公立中学校の50代男性教員は、進路指導で私立高校を併願する生徒が減ったことを実感している。「3、4時間目にきて給食を食べて、またいなくなる子がいる」とも話した。

  就学援助費については、昨年3月の法改正で05年度から、自治体が独自に資格要件を定めている「準要保護」への援助に対する国庫補助がなくなった。一部の自治体では06年度の予算編成に向け、準要保護の資格要件を厳しくするなど、縮小への動きも始まっている。

 ■二極化に驚き

 〈苅谷剛彦・東大教授(教育社会学)の話〉塾に1カ月に何万円もかける家庭がある一方で、学用品や給食費の補助を受ける子どもがこれだけ増えているのは驚きだ。教育環境が、義務教育段階でこんなに差があって、次世代の社会は、どうなってしまうのか。こうした中で、国は補助金を一般財源化した。今後、自治体が財政難を理由に、切り捨てを進めるおそれもある。機会の均等もなし崩しになっては、公正な競争社会とは呼べない。

 〈キーワード・就学援助〉学校教育法は、経済的な理由で就学に支障がある子どもの保護者を対象に「市町村は必要な援助を与えなければならない」と定めている。保護者が生活保護を受けている子ども(要保護)に加え、市町村が独自の基準で「要保護に準ずる程度に困窮している」と認定した子ども(準要保護)が対象。


[PR]

by news-worker | 2006-01-03 20:12 | 社会経済  

「放送レポート」に対談「記者クラブを出よ」収録

 c0070855_11292542.jpg
 以前のエントリーでも報告した(ココ「記者クラブ改革」)が、メディア総合研究所の依頼でフリージャーナリストの寺澤有さんと行った対談「記者クラブを出よ」が、同研究所発行の「放送レポート」1月号に掲載された。
 対談を読み返して思うのだが、記者クラブ問題は、その中に今の大手メディアの問題すべてを内包しているように思う。あえてそれをひと言で言えば、「自分たちは特別」という選別意識だろうか。記者クラブは改革が叫ばれてきたが、「新聞協会に加盟している報道機関」という記者クラブへの加盟の基準だけは頑として動かなかった。せいぜい、新聞協会加盟に準じる扱いとして、外国報道機関に拡大されただけだ。
 実は、企業としてのマスメディアはまさに「特別な存在」だ。NHKが公共放送として視聴者の受信料を基に経営が成り立っているのは分かりやすいが、民放も政府から放送法、電波法に基づき「公共性」「公正中立」の観点から強力な指導・監督を受ける。新聞は政府・権力とは基本的にフリーの関係だが、著作物再販制度という特権を享受している。やはり特別な「言論商品」の扱いを受けているのだ。この点は書籍・雑誌も同様だ。
 その「特別な存在」とは、各メディアの「公共性」そのものにほかならない。各メディアが自らの公共性を自覚し、その社会的責任をきちんと果たしているのであれば問題はない。記者クラブも、NHKの受信料も、新聞の再販制度も、「特別な存在」であることの意識が鈍化し、既得権益化してしまっているから問題ではないかと思う。
 個人的な見解を言えば、わたしは記者クラブは必要だと思うし、新聞の再販も必要だと思う。民営化論議が始まっているがNHKも公共放送として残った方がいい。しかし、記者クラブにしても再販にしても、掲げる理想と現状とは大きなかい離がある。メディアの「公共性」が実現されていない。そこが問題だし、メディアの危機だ。わたしたちメディアの内部にいる人間は、まずそのことを自覚しなければならない。そして、市民とともに歩むメディアに変わっていかなければならない。
 さて、放送レポート1月号は定価500円。全国の書店で注文できるそうです。
[PR]

by news-worker | 2006-01-02 11:34 | メディア  

現役デスク、記者座談会「今、憲法を伝えよう」

 明けましておめでとうございます。
 新年早々だが宣伝を一つ。新聞労連が加盟する日本マスコミ文化情報労組会議(略称MIC、議長はわたしが務めている)が、日本ジャーナリスト会議(JCJ)と共同で運営しているWEBサイト「憲法メディアフォーラム」に、新春企画として新聞、放送メディアの現役デスク、記者らによる座談会「今、憲法を伝えよう」を掲載している。
 このサイトは、憲法改悪を阻止するためにジャーナリストとメディアの労組が市民と連帯・共闘を深めることを目的として、昨年4月に立ち上げた。数ある憲法関連サイトの中でも特色を出すために、メディアの憲法報道を主要なテーマの一つにしている。わたしも編集委員の一人なのだが、率直に言ってコンテンツの拡充が課題になっている。
 そんな中、昨年秋の編集委員会で、自民党の新憲法草案の最終決定をどうサイトで扱うかという話になった。その議論の中で、改憲問題の報道スタンスがメディアの内部ではどうやって決められているのか、社説について組織内で広範な議論があるのか、などをテーマに座談会をやることを決めた。メディアの現状を広く一般の市民にも知ってもらい、意見や感想、批判も寄せてもらいたい。そうであってこそタイトル通りの「フォーラム」になる。
 収録は12月上旬に行った。わたしも進行役で実名で登場するが、新聞、放送、NHKから出席していただいた方々は匿名にしてある。サイトのトップページからPDFファイルを開いて読むことができる。ぜひご一読を。そして感想を同サイト宛て(トップページ内のメインメニューから送信できる)にお送りください。

 「憲法メディアフォーラム」トップ
[PR]

by news-worker | 2006-01-01 01:10 | 平和・憲法