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「糞バエ」

 以前のエントリー「辺見庸氏の罵倒に答えてみたい」に、北海道新聞の高田昌幸さんからトラックバックをいただいた。これを機に、もう少しだけ書いてみる。
 前のエントリーでは、新聞産業の合理化のこととか、いろいろ言い訳めいたことを書いた。それに対してコメント欄に厳しい言葉もいただいた。それらのひとつひとつに、返す言葉はない。しかし、まるっきりの言い訳だとは思っていない。少なくとも現実がそうであること(生き残り、営利追求、効率優先の経営方針のために職場が息苦しくなっていること)は間違いがない。新聞社や放送局も企業であり、一般の産業界と内情は何も変わらない。人件費抑制のために非正規雇用が増えているし、人員増がないまま業務が拡大する一方の正社員は、長時間労働と健康不安が激化している。長期休業者も在職死亡者も多発している。
 その中で自問自答してみる。確かに自分は糞バエの一匹だ。それでも、糞バエなりの意地は残っているはずだと。その意地をどこで見せるのか、と。そうやって、自らを鼓舞している。
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by news-worker | 2006-08-31 00:41 | メディア  

「ビラまき逮捕」に無罪は出たが…

 いわゆる「ビラまき逮捕事件」のうち、2004年12月に東京都葛飾区のマンションで共産党の議会報告などを各戸に配布していて、住居侵入の現行犯で逮捕、起訴された男性の判決公判が28日、東京地裁で開かれ、無罪が言い渡された。(共同通信毎日新聞
(引用開始)
政党ビラ配布、被告無罪 東京地裁で2件目 [ 08月28日 13時15分 ]
共同通信
 共産党のビラを配るために東京都葛飾区のマンションに立ち入り、住居侵入の罪に問われた僧侶荒川庸生被告(58)=葛飾区=に対し、東京地裁は28日、無罪(求刑罰金10万円)の判決を言い渡した。
 大島隆明裁判長は「プライバシーや防犯意識の高まりを考慮しても、廊下など共用部分への立ち入りが処罰の対象とする社会通念は確立していない。マンションの立ち入り拒否の掲示も商業ビラが対象で、立ち入りに正当な理由がないとはいえない」として、同罪の成立を認めなかった。
 2004年以降、東京都で摘発が4件相次いだ政党などのビラ配布事件で、無罪判決は立川市の自衛隊宿舎への「イラク派兵反対」ビラ配布事件の1審(控訴審で逆転有罪)に続き2件目。
(引用終わり)

 「無罪」の結論には、正直ホッとする思いだ。しかし、実はこの判決は、喜んでばかりもいられない要素を含んでいる。以下、毎日新聞の記事の要の部分を引用する。
判決はまず、マンションへの立ち入りが許されるかどうかについて「他人の住居の平穏を不当に害することは許されず、憲法だけを根拠に直ちに正当化することは困難。目的や態様に照らし、法秩序全体の見地から社会通念上容認されざる行為と言えるか否かによって判断するほかない」と指摘した。
 そのうえで(1)政治的主張のビラ受領で、住民の平穏が侵害されるとの不安感を抱くことは少ない(2)配布の際の滞在時間は7、8分程度でプライバシー侵害の程度もわずか(3)ビラ投かんでの立件はほとんどない――などと判断。「立ち入り拒否の張り紙は商業ビラの投かん禁止とも読み取れ、マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」として、正当な理由のない違法な立ち入り行為に当たらないと結論付けた。

 判決は、マンションの共有部分への立ち入りが即座に処罰対象になるとの社会通念は確立していない、とする一方で、住居侵入罪よりも憲法21条の表現の自由が絶対的に優位あるとも認めていない。「マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」ということは、逆に言えば、仮に政治的主張のビラであっても、マンション住民の総意として拒否し、その意向を明示していれば、住居侵入罪を構成するということになる。
 「無罪」の結論はもちろん歓迎すべきだが、この判決は住居侵入罪の成立について丁寧に、しかし実は形式的に判断を示しただけであり、決して「表現の自由」を重視した判断ではないと思う。その意味では、自衛隊官舎にイラク派遣反対のビラを投函した市民グループの3人が逆転有罪となった、いわゆる「立川テント村事件」の東京高裁判決と同じ発想のもとにあると言ってもいいのではないかと思う。立ち入り拒否の掲示の認定が変われば、つまり、部外者に対して商業ビラであれ政治ビラであれ立ち入り拒否を明示していた、との認定ならば有罪でもおかしくない。恐らく、検察側は控訴し、その辺を補充立証するだろう。
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by news-worker | 2006-08-29 01:08 | 平和・憲法  

オーマイニュース日本版のこと

 オーマイニュース日本版が28日から本番始動する。6月から続いてきた「開店準備中ブログ」をめぐってネット上で様々語られているが、本当の評価は実際に本番運用がどのようなものになるのか次第だろう。
 本番稼働からおおむね1週間というタイミングで9月2日(土)の午後、オーマイニュースにブロガー有志らが加わって共催するシンポジウム「ブロガー×オーマイニュース『市民メディアの可能性』」が開かれる。詳しくは、藤代裕之さんのブログ「ガ島通信」のエントリーで。今のところ、鳥越俊太郎オーマイニュース編集長も参加の予定という。

 さて、オーマイニュースの準備ブログで起こった〝炎上〟についての分析は、上記藤代さんのエントリー「オーマイニュースジャパンの『炎上』と『現状』」が、わたしはもっとも納得性が高いと感じた。鳥越編集長と編集部員に対して相当に厳しい指摘が書き連ねられているが、とりわけ以下の部分の指摘は分かりやすい。
ネット音痴ぶりは、炎上のトリガーとその対応でも明らかで、たぶんほとんどの編集部員がブログやSNSをやったこともないのでしょう。少しばかり本を読んだり、人から話を聞いたところで、既存メディア的な発想はなかなか変わりません。そしてなによりも、オーマイジャパンの市民記者による記事の紹介の仕方を見ていると、多くの市民が既に自分のメディアを持っているというパラダイムのシフトに全く気づいていないという可能性が高い。鳥越氏がブログをあれだけ見下した発言をしていながら、あのような低レベルな市民記者の記事を並べているのは、別にオーマイジャパンに書かなくても、ブログで書けばいいという状況を理解していないからなのでしょう。


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by news-worker | 2006-08-26 13:48 | メディア  

労働組合は平和のための権利~MIC議案書

 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)の定期総会が9月30日に開かれ、わたしもMIC議長を退任する。その総会に向けて、議案書原稿を書かなければならない。議長ということで、向こう一年の運動方針の基調はわたしの担当になっている。
 この秋以降、憲法や平和をめぐる情勢はいちだんと厳しさを増す。保坂展人・衆院議員がブログで書いていたが、自民党総裁選を経た後の秋の臨時国会は、教育基本法「改正」と共謀罪が2大テーマになる、つまりは「教育勅語」と「治安維持法」だ、という。その先にあるのは憲法「改正」であり、自衛隊の軍隊化と集団的自衛権行使の解禁だ。先行して、既に在日米軍基地の再編プロセスに日米両政府が合意している。「戦争(をする)社会」への道と、共謀罪=治安立法に代表される「監視社会」への道が表裏一体となって進んでいる。
 もうひとつ、わたしたちの社会で進んでいるのが「格差社会」への道、もう少していねいに言えば「格差が固定化する社会」への道だ。これは経済上の問題として語られることが多く、それも間違ってはいないが、それだけではないと思う。「戦争社会」「監視社会」と密接不可分だと思う。ひとつは、戦場に行って殺し殺され合いをするのはだれか、という問題に直結する。つまり「ろくに働かない、ろくな仕事もないニートやフリーターは、自衛軍に入って国のために死んでこい」という風潮がやがて出てくるのではないか、ということだ。あるいは、格差の固定による貧困層の拡大が社会不安を増幅させ、やがては戦争を招くのではないかということだ。
 こうした情勢の認識は、これまでもこのブログで書いてきた。こういう情勢の中で、今こそ労働組合は自らの役割と責任を自覚しなければならないと思う。とりわけ、情報であれ文化であれ、社会に何かを「表現」することを仕事としているわたしたちの労働組合運動は、より重い役割と責任を負っている。
 労働組合はそれ自体、働く者に固有の団結する権利だ。権利は適切に行使していかなければ権利として輝くことはない。そして今や、この権利をどう広げていくのか、いまだこの権利を手にできないまま、格差の固定化の中に放置されている多くの人々に、どうやってこの権利を広めていくのかが、わたしたち既存の労働組合に問われてもいる。働く者の団結を武器に、働く者の地位と労働条件の向上を獲得するための権利として、労働組合は認められている。ひいては社会不安を招くような貧困をなくすためでもある。突き詰めて言えば、労働組合は平和のための権利だ。
 MICの議案書には、以上のようなことを書こうと考えている。
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by news-worker | 2006-08-24 13:16 | 労働組合  

辺見庸氏の罵倒に答えてみたい

 最近、トラックバックを交換させていただくようになったsumiyakistさんから、気の重いご指名をいただいた。まずはsumiyakistさんのエントリー「辺見庸氏の罵倒」をお読みいただきたいが、要するに、共同通信を中途退社した作家の辺見庸さんが、最新刊の中で大手マスコミの記者たちを「正真正銘の、立派な背広を着た糞バエたち」と呼んでいることに対し、「糞バエ」と呼ばれた側の右代表として、同じ共同通信に在籍しているわたしに「弁解のひとつも」述べてみよ、というご趣旨だと理解している。
 まず、わたしは共同通信に在籍する記者の一人ではあるが、共同通信記者として発言することがこのブログの本旨ではない。新聞産業の労働運動の専従役員経験者としてしか、ここでは書かない、書けないことをご理解いただきたい。
 労働運動の立場からは、これまでもいろいろな場、市民集会や座談会などで「新聞の今」「記者の今」について発言してきた。このブログでもいろいろ書き連ねてきた(主として「メディア」のカテゴリー)。それらの中では、辺見さんが指摘している状況、つまり記者たちが記者会見など公の場で権力者に切り込むことをしないことに表れている「大手メディアのジャーナリズムの衰退」自体にはわたしも同意してきた。そして、なぜそうなってしまうのか、についてわたしなりに思うところを発言してきた。しかし「御用組合トップの勝手な言い訳、弁解」としてしか受け取られなかったことも少なくなかった。集会参加者の方が感想を書かれたブログ、あるいは座談会記事、わたしのインタビュー記事の感想が書かれたブログを読んで、切ない気持ちになったことが何度もある。

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by news-worker | 2006-08-21 17:06 | メディア  

今後の運営ルールなど

 職場に復帰してから4日経った。戸惑いながらも、徐々に仕事も生活もペースをつかんで行こうと考えている。同様に、このブログの運営も。
 現時点で考えている今後のブログ運営ルールは、まず第一に勤務時間中の更新はしないこと。個人の活動だから、当たり前だ。更新作業は自宅で私物のパソコンを使ってやっている。第二に、会社(共同通信)の内部のことは原則として書かないこと。組織に帰属して収入を得ている身なので、組織にかかわることは、まず組織内で発言するのが筋だと思っている。
 新聞労連委員長職は退任したが、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)議長職は9月30日の定期総会まで任期が残っている。「メディア」と「労働運動」という基本線は維持し、思うところは積極的に書いていきたい。
 環境の変化に合わせて、このブログのスキンも変更してみた。
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by news-worker | 2006-08-20 11:17 | 身辺雑事  

「サービス向上」に隠れた人員削減=合理化は何をもたらすのか~JALの「クラスJ」拡大

 経済ニュースとして報道もされたようだが、日本航空(JAL)が国内線の上級座席「クラスJ」設置を、現在のボーイング747(いわゆるジャンボジェット)などの大型機、中型機から小型機にも拡大する。普通座席に比べて運賃は1000円割高になるが、シートがひと回り広く、リクライニングもフットレスト付きで楽と言えば楽。飲み物のほかに、茶菓子が一つ付く。設置の拡大は、収益増につなげるための国内線サービス強化ということだろう。
c0070855_2584281.jpg この「クラスJ」が新たに設置される小型機のひとつに「MD90」という機種がある。写真でも分かるように、胴体が細長いのが特徴。機内のシート配列はこのようになっている。
 本題はここからだ。航空関係の労組の共闘組織として、航空労組連絡会(航空連)という組織がある。そこの旧知の方から先日、メールをいただいた。このMD90へのクラスJ設置によって、会社(JAL)は従来4人編成だった客室乗務員を3人編成に減らす方針なのだという。これはJALのホームページにも、報道にも出ていない。

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by news-worker | 2006-08-20 03:19 | 労働組合  

「偽装請負」報道に対し電機連合は「『違法行為はなかった』ことが確認されている」とコメント

 以前のエントリーでも少し触れたが、朝日新聞が製造業の「偽装請負」を継続的に取り上げ、雇用の側面から格差社会の実相に切り込む報道を続けている。で、この朝日の報道を明らかに意識したと思われるコメントを、電気電気機器産業の産別組合である電機連合が8月7日に委員長名で発表していた。書き出しは「 一部新聞において『製造業における偽装請負』に関する報道がなされましたが、『違法行為はなかった』ことが確認されています」。まるで経営側のコメントではないか。
 このコメントに対して、水口洋介弁護士がご自身のブログで見解を表明しておられるのを知った。共感するところが多いのでご紹介する。

追記 8月18日午前5時
 「偽装請負」はマスコミ産業にも見られ、決して他人事ではない。そうした労働者の権利の侵害、あるいは抑圧の上に、正社員労働者の待遇があることを、正社員労働者は自覚しなければならない。
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by news-worker | 2006-08-17 23:56 | 格差社会  

職場に復帰しました

 2年間の労働組合専従を終え、今日から共同通信社会部の職場に戻った。きょうは、仕事に必要なスキルや知識のあれこれを、2年の間にすっかり忘れてしまっていることに否応なく気付かされた。しばらくは習熟運転が続く。
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by news-worker | 2006-08-16 22:21 | 身辺雑事  

靖国参拝支持が51・5%~共同通信調査

 前回のエントリーで「関心がある」と書いた小泉首相の靖国神社〝強行参拝〟に対する世論の反応が判明した。共同通信が15-16日に実施した緊急電話世論調査では「参拝してよかった」が51・5%を占めた(共同=東京新聞)。
(引用開始)
次期首相の参拝44%反対 靖国で世論調査
 小泉純一郎首相が終戦記念日の15日に靖国神社を参拝したことを受け、共同通信社は15日午後から16日にかけて全国緊急電話世論調査を実施した。首相の「8・15参拝」について「参拝してよかった」との回答が51・5%で半数を超えたが、次期首相に関しては「参拝すべきではない」が44・9%、「参拝すべきだ」が39・6%で反対派が上回った。同神社に合祀(ごうし)されている第2次世界大戦のA級戦犯については「分祀(ぶんし)した方がよい」が60・4%に上った。
(引用終わり)

 あらためて、15日の靖国神社周辺の報道をみれば、朝から単なる野次馬ではない、もう一歩踏み込んで「小泉応援団」的な参拝客が多く、小泉首相到着時には、とりわけ若い層が歓声で出迎え、携帯電話のカメラで必死に首相の写真を撮っていた様子が記録されている。報道の記事、あるいはブログの書き込みを見ても、参拝を支持する人たちの理由は「中国や韓国の外圧に屈しなかった」という点が多数派のように感じる。小泉首相自身が15日の釈明会見で、真っ先にこの点を力説したことが功を奏し、「51・5%」という数字につながったとみていいのではないか。つまりは、扇動者によるナショナリズムの高揚だ。
 一方で、次期首相については「参拝すべきでない」が44・9%と、「参拝すべき」の39・6%を上回ったことは、どう考えればいいのだろうか。
 仮説だが、小泉首相は理屈にならない理屈を振り回して参拝を強行したけれども、それでもA級戦犯には戦争責任があると言い切り、一応ながら戦争を否定して見せた。しかし、次期首相に当確も同然の安倍晋三官房長官は、A級戦犯の戦争責任も、戦争そのものの否定も、決して明確に断じようとしない。調査に回答した人たちが、「次期首相」と問われて頭に浮かべるのは安倍長官だろう。「外圧に屈するべきではない」と考えた過半数の人たちも、だからと言って、本気で北朝鮮や中国と戦争を起こしかねない政治家を支持しているわけではない、ということか。
 もうひとつ仮説を立ててみる。小泉首相の参拝をめぐっては、きのう15日だけでも様々な観点からの分析、検討、批判、批評がなされた。戦争を肯定する靖国神社のそもそも論、憲法が定める政教分離など、「中国、韓国の外圧云々」以外の本質的な論点にあらためて触れた人たちの中に、「まあ、今回限りはしょうがないが、やっぱり首相の公式参拝はまずいよね」と考える人が出ている、とは考えられないだろうか。
 他の世論調査結果も見ないと断定的なことは言えないのは当然だ。それを前提としてだが、「51・5%」という数字は十分衝撃的ながらも、そのまま戦争肯定ということではないかもしれないと、少し楽観的に考えている。

追記 8月16日午後10時半
 読売の世論調査結果も判明。小泉首相の参拝支持は53%、支持しないは39%。次の首相の参拝については、「賛成」が計43%、「反対」が計39%だった。大まかな傾向は共同通信の調査結果と同じと言っていいだろう。
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by news-worker | 2006-08-16 22:14 | 平和・憲法