タグ:知る権利 ( 5 ) タグの人気記事

 

自殺した少年容疑者の報道は実名でいいと思っていたが…

 山口県の徳山工業専門学校の女子学生殺人事件で、指名手配されていた19歳の同級生の男子学生が7日、自殺しているのが見つかった。この男子学生の氏名を実名で報じるか、匿名とするかで、7日夜から8日にかけて、メディアの扱いが分かれた。
 まず、放送では7日夕方ニュースから日本テレビとテレビ朝日が実名と顔写真を付けて報道。新聞全国紙では読売新聞が8日付け朝刊でやはり実名、顔写真を掲載した。他は地元紙の中国新聞(本社広島市)を含めて、みな匿名を維持した。
 実名3社の見解は、読売新聞が掲載した「おことわり」に尽きると思う。
(引用開始)
◆おことわり◆ 読売新聞社はこれまで、容疑者が未成年のため、匿名で報道してきましたが、容疑者が死亡し、少年の更生を図る見地で氏名などの記事掲載を禁じている少年法の規定の対象外となったと判断したことに加え、事件の凶悪さや19歳という年齢などを考慮し、実名で報道します。
(引用終わり)

 わたし自身は、今回のケースは「実名」かなと考えていた。しかし、8日付けの各紙を読み比べているうちに、ちょっと分からなくなってきた。
 依然、「実名」でも問題ないと思う要因としては、例えば被害者遺族は公開捜査を望んでいた、ということが報じられている。しかし、一方では、死によって男子学生は事件に対する釈明をする場を永久に失ってしまった。被疑者、被告には「無罪推定の原則」が適用されていることに鑑みれば、裁判を受けることができず、弁明の機会がないままに、実名であたかも真犯人として確定したかのような印象を残したまま、事件報道が終結していくことがいいことかどうか、という意見もある。
 少年法が明確に想定している事態ではないし、法解釈上も割れているようだ。被害者の実名、匿名問題とは違って、世論もはっきりとどちらかを支持するというふうにはいかないのではないか。
 今現在、実名と匿名、どちらが妥当か迷いがある。どちらかと言えば実名、という気がしている。ただし、実際の報道にあたっては、拙速だけは避けなければならないと思う。匿名から実名に切り替えるのはいつでも可能だが、一度実名を出してしまえば、後戻りはできない。十分に部内で議論を重ね、遺族ら当事者を含めて必要な取材を尽くした上で、読者・市民に納得してもらえるだけの見解を用意して、それから実名に切り替えても何ら問題はない。

 この事件では週刊新潮が遺体発見よりも前に実名、顔写真を掲載した。週刊新潮は以前から信念をもって同様の報道を繰り返しており、それはそれで雑誌メディアとしての見識と言えば言えると思う。個人的にはまったく支持できない。
[PR]

by news-worker | 2006-09-09 11:57 | メディア  

イラクの自衛隊取材ルールは今も有効

 日本政府は20日、イラク・サマワに派遣している陸上自衛隊部隊の撤退を正式に決めた。主体的な判断ではなく英軍の撤退に合わせて、とか、遅きに過ぎるとか、色々と思うところはあるが、これから始まる撤退作戦をメディアが報じていく上で、気になることがある。2004年3月に、防衛庁と日本新聞協会、日本民間放送連盟(民放連)の3者が確認した現地取材のルールのことだ。その中に、どうみてもメディア側が防衛庁、自衛隊の事前検閲を容認したとしか解釈できない項目が含まれている。
 これまでは、サマワに日本の大手メディアが常駐していなかったから、この検閲規定が問題になることもなかった。しかし、自衛隊の撤退はそれ自体が大きなニュースだ。撤退中の自衛隊部隊が襲撃を受けでもすれば、国際的なトップニュースになる。当然、日本の大手メディア各社も現地取材を考えるはずだ。個々の取材場面では、検閲規定をめぐり防衛庁・自衛隊とメディア側の対立が生じるのではないか。生じなければおかしい。唯々諾々と〝大本営発表報道〟を行うつもりなら別だが。

続きを読む
[PR]

by news-worker | 2006-06-22 21:11 | メディア  

「取材源の秘匿」の意味を理解した妥当な司法判断

 以前のエントリー(「取材源の秘匿」が理解できない裁判官が現れたことの意味は、および(続)「取材源の秘匿」が理解できない裁判官が現れたことの意味は)で言及した裁判の抗告審で東京高裁は14日、報道機関の「取材源の秘匿」を幅広く認定する決定を出した。以下、毎日新聞記事の一部を引用する。
(引用開始)
<取材源秘匿>1審取り消し、証言拒絶認める 東京高裁 [ 06月14日 12時12分 ]
 米国の健康食品会社への課税処分に関する報道を巡り、読売新聞の記者が民事裁判の証人尋問で取材源の証言を拒絶したことについて、東京高裁は14日、拒絶を認めなかった東京地裁決定(藤下健裁判官)を取り消し、すべての尋問に対して拒絶を認める決定を出した。地裁決定は取材源の守秘義務違反を理由に拒絶を認めなかったが、高裁の赤塚信雄裁判長は「たとえ取材源に法令違反があっても、取材源秘匿はその人物の利益のためになされるわけではない。秘匿によって守られているのは、国民の知る権利を確保するという公共的な利益」と述べた。
 証言拒絶を認める4回目の決定。一連の決定で唯一証言拒絶を認めなかった地裁決定が取り消されたことで、取材源秘匿を正当と認める司法判断の流れが一層強まった。
 決定は「報道機関の報道は国民の知る権利に奉仕するもので、報道の自由は憲法の保障のもとにある」と指摘。さらに「取材活動は公権力の介入から自由でなければならず、報道機関と情報提供者との信頼関係が十分確保されなければならない。そのために取材源が秘匿される必要がある」と判断した。
(引用終わり)

 以前のエントリーでも書いたとおり、普通の感覚でこれまでの判例、判決例を考慮して考えれば、当然、こうした結論になる。極めて当然の判断だ。
 原審の東京地裁の藤下健裁判官は、「取材源の秘匿」を公務員に認めれば、公務員の守秘義務違反を助長することになる、との無茶な論理展開を示していたが、今回の東京高裁決定は、分かりやすい判断を示しているようだ。決定の要旨を見ていないので、正確なところは分からないが、毎日新聞の解説記事によると、決定は「取材源の秘匿が『守秘義務違反行為を犯した公務員のため』ではなく、『国民への自由な情報提供(知る権利)を確保するという公共的な利益に基づいている』と位置づけた」という。
 「国民への自由な情報提供」というメディア本来の役割を重視したまともな判断だ。
[PR]

by news-worker | 2006-06-15 01:07 | メディア  

特殊指定の新聞労連特別決議

 4月20-21日、新聞労連の加盟全労働組合の代表が集まる中央委員会を東京で開催した。春闘総括、夏闘(夏のボーナス交渉など)方針など労働運動の定番の議案とともに、販売問題として特殊指定問題を中心テーマのひとつに据えた。議事の最後に特別決議を採択し、公取委、日本新聞協会など関係団体にも送付した。

「新聞の特殊指定維持を求め、販売正常化と読者に信頼される新聞ジャーナリズムの確立に取り組む特別決議」(新聞労連ホームページ)

 中央委員会では労連本部から、今後の取り組みとして①制度存続を求める理由は、乱売を防ぎ多様な新聞を守ること②そのために販売正常化を達成しなければならないこと③独禁法の適用除外の理由でである「新聞の公共性=国民の『知る権利』に応え信頼される新聞ジャーナリズム」を確立すること-を3本柱に、まず、各組合の中で議論と行動を起こしてほしい、と呼びかけた。
 特殊指定問題は、わたしたち自身が新聞をどう考えるのか、そのためにどう行動していくのかが問われている問題だ。5月には新聞労連として中央集会も計画している。そのときまでに、全国で新聞の労働運動の中に行動を起こしたい。そして、わたし達自身が直接、読者と市民に訴え、また読者や市民の声にも謙虚に耳を傾けていきたい。そういう運動にしなければならない。

 中央委員会では参加者からも執行部に対して発言をいただいた。その中の一人、今だけ委員長さんのブログ「新聞業界っておもしろい!?今だけ委員長の独り言」のエントリー「社会的使命を忘れるな!」をご紹介しておきたい。
[PR]

by news-worker | 2006-04-22 11:31 | メディア  

共謀罪審議入り(メモ)

 共謀罪新設法案が21日、審議入りした。報道やブログ情報によると、28日にも強行採決の危ぐ。個人の精神の営みを処罰、取り締まりの対象とし、自由な言論、自由な表現活動を圧殺する恐れが強い共謀罪が、数をたのんだ強行手続きで成立に向かおうとし始めている。

 衆院法務委員会の審議のもようは、保坂展人議員のブログ「保坂展人のどこどこ日記」が詳しい。
 21日の審議は騒然とした中で始まった。「共謀罪のスタートは強硬離陸」

 「共謀罪審議入り~修正提出案全文掲載:日弁連は断固反対
 「共謀罪への御懸念に対する回答への懸念」
(情報流通促進計画byヤメ記者弁護士)

 「共謀罪法案の審議が始まった」
 「いよいよ共謀罪法案の審議が始まる」
(法と常識の狭間で考えよう)

 共謀罪新設には、日弁連は一貫して反対している。
 日弁連会長の声明
 4月26日に反対集会

 26日には超党派の緊急院内集会

 共謀罪には新聞労連も3月14日、法務省に廃案とするよう申し入れた(要請書)。
 昨日21日は新聞労連の基幹会議である中央委員会があり、あらためて共謀罪に反対の方針を確認。今後、国会情勢の推移に注目し、労連本部から緊急の行動提起に備えるよう要請した。
[PR]

by news-worker | 2006-04-22 10:44 | 平和・憲法~共謀罪