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新しい労組にとって後ろ盾は重要だ~「ケンタッキー・フライド・チキンにも労組誕生」で思うこと

 きのう(22日)の報道になるが、ファスト・フード大手の一つ「日本ケンタッキー・フライド・チキン」(KFC)の店長らが、同社初の労働組合を立ち上げた(朝日新聞の記事)。
(引用開始)
 現在のメンバーは20人で、横浜市の店舗で店長を務める濱口徳之委員長(45)をはじめ神奈川県内の店長が中心。背景には、サービス残業や休日出勤を事実上余儀なくされる店長らの負担増があるという。
 濱口委員長は「会社が成長した最大の理由はカーネル・サンダース秘伝のスパイスではなく、現場で働く社員のサービス残業。現場の様々な問題を会社側と対話し解決するには労組をつくるしかないと考えた」と話す。
 同社の直営店では約1万3000人の非正社員が働いている。だが、誕生間もない労組がどれだけの成果を上げられるか見通しがつかないので、当面は約1000人の正社員を対象に加入を呼びかける。
 政治色を排して組合費を安く抑えるため、既存の労働団体の後ろ盾は受けないことにした。労働問題に関する市販の解説本を回し読みし、地元自治体の労働相談に出向くなど「労働問題の素人が手探りでスタートさせた」(濱口委員長)。連合の全面的な支援を受けて組織拡大を図るマクドナルドの労組とは対照的だ。
(引用終わり)

 手作りの労働組合結成ということだろうか。恐らくは、大変な苦労があったと思う。応援したい。しかし、一方で「素人が手探りでスタート」という点に不安も感じる。ただちに上部団体へ加盟するかはともかく、しっかりとしたアドバイザーは付いているのだろうか。
 外資系のファスト・フード産業となれば、労務政策は米国本社の意向が反映されるのは間違いない。会社がその気になれば、正社員1000人のうちの20人の組合を無力化するのは簡単だ。会社の息がかかった正社員で構成する第二組合を組織し、社員の過半数を押さえてしまえばいい。つまり何でも会社の言いなりになる「御用組合」を用意し、賃金や労働条件はその御用組合との間で決めてしまえば、少数組合は何もできない。
 もっと直接的な労働組合つぶしもある。多国籍巨大資本は恐ろしい。昨年、労働組合の国際会議の場で聞いた話(以前のエントリー)だが、スーパーマーケットの「ウォル・マート」は、組合結成の動きを見せた従業員を解雇したり、同じく組合が結成されそうになった店舗を閉店にしてしまったりする。もちろん、日本でそんなことをやれば不当労働行為だが、会社側はもっともな口実を用意しているし、そういったことを許すか許さないかは、基本的には労使間の力関係だ。すべてを法律が守ってくれるのではない。だから、マクドナルドの労組のように、頼りになる後ろ盾を持って会社と対決していくことは、実は重要なことだ。
 労働組合は、作ることもさることながら、作った後こそ真価が問われる。ケンタッキー・フライド・チキンの労組にはがんばってほしいし応援もしたいが、すべてを自分たちだけでやろうとせず、〝けんかのやり方〟を知っているアドバイザーに付いてもらうことを勧めたい。
 

by news-worker | 2006-06-23 13:47 | 労働組合  

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