
多くのブログで取り上げられているのを見て読んでみた。インターネットのシステム面はまったくといいほど知識がないわたしでも、それなりに今後のネット社会のイメージを頭に描くことができる。Google、Amazonがそれまでのネット企業とどう違うかもよく理解できる。そういったことを念頭においてあらためて「EPIC2014」を見ると、ニューヨーク・タイムスが競争に敗れ去り、「紙」特化に原点回帰していくという近未来ストーリーも、今まで以上に切実感を感じる。
ひと言で言えば、ネットに興味があってブログもやってみたいのだけれど、今さら「Googleって何?」と恥ずかしくて人に聞けない、40代以上の中高年に最適の一冊かもしれない。どうせ読むならば、隠れてではなく、職場で堂々と「今、読んでいるんだ」と宣言することをお奨めする。多分、20-30代の部下との会話のきっかけになると思うし、彼らから色々と新しい知識を得ることもできるだろう。知らないことを教えてもらうのは「恥」ではない。
わたしは著者の梅田望夫さんと同い年。そのことに関連して言えば、実は本書でいちばん印象に残ったのは「終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち」だった。
わたしを含め、大概の凡庸な組織人は一定のところまで階段を上ってくると、あとは上しか見なくなる(「見えなくなる」のかもしれない)。その頃には、身についている術といえば、組織の中でしか通用しないものばかりになっている。それが40代半ばという年代ではないかと、わたし自身を省みて思う。この場合の「組織」とは、別に特定の企業や団体に限らなくてもいい。「新聞業界」とか「新聞記者の世界」と言ってもいいかと思う。
梅田さんが組織人であるかどうかは別にして、さらには「それでも梅田さんはエスタブリッシュメントではないか」という指摘があるかもしれないが、梅田さんが主観として「脱エスタブリッシュメント」と言い切るところに、ある種の感銘を受ける。「牛尾を捨てて鶏口とならん」というその姿勢に、まばゆさすら感じる。この気持ちは、同世代にしか分からないかもしれないが。
▲ by news-worker | 2006-03-12 22:53 | 読書