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日韓のメディア労組交流

15日から17日までソウルに出張した。新聞労連が民放労連や出版労連などメディア関連労組とつくっている日本マスコミ文化情報労組会議(略称MIC)という団体がある。ことし8月、MICが韓国の全国言論労組(略称NUM)と共同で、日本にとっては戦後60年、韓国にとっては解放60年になるのを記念したシンポジウムをソウルで開催するための打ち合わせが用件だった。
NUMは韓国の新聞、放送、出版などの産業で働く人たちの労働組合だが、日本と大きく異なるのは、企業別組合の連合体ではなく、個々人が所属企業の違いを超えて直接、個人として加盟する一つの組合であることだ。所属企業ごとに分会・支部を持つ構成となっている。NUMの委員長は組合員の代表として、個々の企業経営者と直接、交渉することもある。また、新聞の販売適正化のために、NUMとして政党に政策提言をすることもある。日本のメディア労組ではちょっと考えられない。
 興味深いのは、韓国の3大新聞と呼ばれ、保守的な論調と指摘されることが多い東亜日報、中央日報、朝鮮日報の3社の組合員たちが、NUMに参加していない点だ。韓国のマスコミ各社も以前はみな、日本と同じように企業別組合だった。数年前、既存の組織を再編してNUMが発足したが、3大紙の労組は参加せず、今も企業別組合にとどまっている。
 さて、8月のシンポの打ち合わせは順調だった。
 島根県の「竹島(韓国での呼び名は独島)の日条例」制定に直接の端を発する外交紛争にみられるように、日韓の真の和解はいまだに成っていない。その和解に向けて、メディアとジャーナリストが今、何をしなければならないかをテーマにすることで合意した。MICからは「つくる会」教科書の問題や、小泉首相の靖国参拝などの問題を糸口に問題提起したいと提案した。NUMからは、拉致問題などを切り口に、北朝鮮報道の日韓の違いを取り上げたいとの提案があった。MICとNUMの交流は、新聞労連が先鞭をつけたころから数えて10年の交流があり、信頼関係は厚い。実りの多いシンポになると思う。
日韓のメディア労組交流_c0070855_18572340.jpg日韓の和解に向けてメディアが果たす役割は、突き詰めるならば日韓それぞれの市民が何を考えているかを、相互に伝え合うことにあると思う。双方の市民レベルの交流と相互理解が、政治をも動かすのではないか。
 3日間の滞在中、ソウルでも中国での反日デモや領事館、日系商店への襲撃は大きな話題だった。しかし、ソウルでは日本語を話しながら街を歩いていても、反発的な空気は感じなかった。NUMの人たちは「政治レベルは別として、一般市民の間に反日感情が高まることはない」と話していた。政治がどうあれ、真の相互理解は市民の相互理解からであり、メディアが果たす役割は大きい。
(写真はソウル支庁。その後ろのビルがNUM事務局がある韓国プレスセンター)

# by news-worker | 2005-04-18 17:10 | メディア  

学生が感じた“社風”

 新聞労連の集会や行事を手伝ってくれた学生たちの作文をゼミ形式で添削している。先週の土曜日の午後、3回目のゼミを開いた。大手マスコミは入社選考シーズンまっさかり。学生たちも必死だが、面接などを通じた彼らなりの各社評価がおもしろかった。
 ある大手新聞社は尊大。面接日時の連絡の電話でも、一方的に用件を告げ、こっちの都合など聞こうともしない。筆記試験では、監督係の社員が携帯電話でメールを打っていたという。
 この新聞のライバルを自認する別の大手新聞社は、面接担当者がやたらに恐い。最後に「質問があれば何でも聞いて」と言うので、学生が「最近、新聞記者のブログが増えていますが、御社は自社の記者が社外で意思表示することにどう対応しますか」と聞いたところ、まず、この担当者は「ブログ? なに、それ」「『ガ島通信』? 知らないなあ」。概要を学生が説明すると「我が社としては、社外で記者が意思表示することは認めないでしょう」との答えだったという。
 政治との距離が問われている公共放送は、意外だが評判がいい。応対がとてもていねいで、「ここで働きたい」と思わせる雰囲気があるという。
 “教え子”のうち、「最終選考に残りました」と嬉しい報告をしてきた学生もいる。作文ゼミでは、新聞のいいところ、悪いところ、記者の働き方、すべてを話した。それでも皆、新聞記者をやりがいのある仕事と感じている。共通しているのは、隠れている問題を自らの手で掘り起こし、社会に届けたい、という思いだ。彼らの「熱さ」に触れて、わたし自身、あらためて初心を思い起こしている。彼らの健闘を願っている。

# by news-worker | 2005-04-13 11:45 | メディア